本棚の人魚たち・・・「人魚屋敷の殺人」大神晃
今回は秋の夜長のお伴(?)、ミステリー小説をご紹介します。人魚伝説のある孤島で起きる連続殺人。ごく限られたメンバーしかいない中、彼らの内に犯人はいるのか?「人魚屋敷の殺人」大神晃:著(新潮社 2026年9月刊)物語は主人公の青年、鳴海(なるみ)が、中学生時代の初恋を回想する形で始まります。転校生の少女、姫草櫻に惹かれて交際するようになった鳴海ですが、櫻は瀬戸内海の孤島を本部とする新興宗教の教祖の娘でした。同じ高校に進む約束をしたのに、櫻は教祖を継がなければならないと故郷に帰ってしまいます。教祖になどなりたくないという櫻の本心を知っている鳴海は、継承の儀式を阻止すべく便利屋の男とともに島に渡ります。儀式の開始直前に神殿に乗り込むも、そこは血の海でバラバラになった女性の首無し死体が転がっていて・・・。通称「人魚島」と呼ばれる島に伝わる人魚伝説は、「赤い蝋燭と人魚」の話と八百比丘尼の伝説を混ぜた感じの物語。櫻の母が教祖の新興宗教は、教祖は「おびくに様」と呼ばれ不老不死の力があるとされています。ただし教祖は常に仮面を着けているので素顔はわからない。更に櫻には容姿が瓜二つの双子の妹がいます。果たして神殿で殺されていたのは誰なのか、櫻か妹か?という謎が解けないうちに次々と教団の幹部たちが殺されていきます。読んでいて、事件が起こった当初からこの人は怪しい・・・と思う人物はいて、実際そうなんですが、最初の殺人の核心の部分については意外。そもそもがどういうことなの?という衝撃がありました。この小説に出てくる人魚の鱗は赤い色。青や緑と違って赤は呪術的な力が強いように思います。そういえば「ちいかわ」の映画の人魚の鱗も赤でしたね。日本のホラーやミステリーにおいて人魚の属性といえば不老不死、なのかな。本書で古の島の伝説として語られる、人魚の肉を食べた人間に起きた変化は永遠の現状維持。年寄りは若返るわけではなく老いたままだし、病人はずっと病気で悪くならないけれど薬が効くこともない。伝染病の苦しさから逃れるために人魚の肉を食べたのに、永遠に病人になってしまうという悲惨な伝説です。不老不死の描き方も作家によって色々ですね。