幻想的な作風の写真集、画集などを多く刊行しているアトリエサードから、絵本「赤い蝋燭と人魚」が発売されました。







「赤い蝋燭と人魚」

二階健:ヴィジュアル

小川未明:文

(アトリエサード 2024年2月刊)






幾重にもイメージが重ねられた画像が映し出すのは、コウモリの舞う満月の海、廃墟の洋館のような蝋燭屋、古めかしい車椅子に乗るお下げ髪の人魚・・・。

およそ今までの「赤い蝋燭と人魚」のイメージとはかなり離れた斬新なヴィジュアルです。

それでも物語の基調を損なうことなく、人魚の悲しみ、人間の身勝手さを仄暗い耽美な写真で表現しています。






細かな鱗に覆われた尾びれがリアル。

上の作品は本書の帯にも使用されていますが、作り込まれたイメージの世界に吸い込まれます。

最後、滅びた町の浜辺に両脇を杖で支えながら立つ人魚(母人魚?)をシルエットで表した画像は恐ろしくも美しいです。


本文は、一部の表現が現代の言葉に置き換えられています。



併録の「人魚の恋」は詩と写真の掌編。

こちらは詩も二階健で、人魚の少女の心情が耽美に綴られています。