今回は世界文化社から刊行された「世界の詩とメルヘン」というシリーズより「メルヘンの世界から」をご紹介します。
「メルヘンの部屋3 メルヘンの世界から 矢川澄子(文)と12人の画家」
(世界文化社刊)
「親指姫」「いばら姫」「シンデレラ」「青い鳥」など有名な童話をテーマに12人の画家が描いた小さな絵本です。
人魚姫の絵は東逸子。
東逸子は人魚姫の挿絵をいくつも手掛けていますが、この絵は背中から尻尾までの背びれが特徴的です。
以前にご紹介した世界文化社のワンダー名作ランドのシリーズでも人魚姫の挿絵は東逸子でしたが、やはり大きな背びれがありました。あれは70年代末から80年代頭頃の絵だと思いましたが、この「メルヘンの世界から」も刊行年は記載がないものの絵など全体の雰囲気からやはり同じくらいの年代でしょうか。90年代に刊行された人魚姫の絵本の挿絵では、背びれはあるものの位置はもっと低くなって、ここまで目立つ描きかたではないんですよね。
本書はサブタイトルに〝矢川澄子(文)と12人の画家〟とあるように、各話について矢川澄子の皮肉の効いた短い文章が添えられています。
人魚姫の物語の中で、人魚姫が得た足は歩くたびにナイフを踏むように痛くて誰の目にもわかるくらい血がにじみ出ることに、
『人魚姫の足からしたたる赤い血を、お城の人々はだれも怪しまなかったのでしょうか。気づいていながら見て見ぬふりをしていたのではありませんか。おそろしいことです。・・・・・』
お城の他の女奴隷たちにとって人魚姫の存在は目障りだったろうから、足を痛めて踊れなくなってしまえばいいのにと思われていたのだろう、という文ですが、確かにそうかも。でも人魚姫にしてみれば王子と結ばれなかったら全て終わりなんだから、周りの目はどうでもよかったろうけれど。
「世界の詩とメルヘン」のシリーズは「詩画集」「メルヘンの部屋」の2冊と世界の名曲のカセットブックで1セットになっていて全部で18セットあるようです。
全てを一括で販売したのか、予約制で一定期間ごとに配本したのかはわかりませんが、全部揃えたら見応え、聴き応えありそうですね。場所も取りそうですが。
今の時代であれば有料の専用サイトで絵と音楽、動画も楽しめるというようなサービスになるのかな。
音楽や動画はデジタルでもいいかなとも思いますが、私には絵本は紙の本がやっぱり魅力的に思えます。