今回の人魚本は再びロマンス物に戻って、人魚と人間の恋物語をご紹介します。






「わだつみの嫁取り」

文善やよひ:著

(双葉社  2019年12月刊)





はるか昔、小さな島で村の男キヨ(雪之助)は雄の人魚に女と間違われ“嫁”になりました。

そこから長い時が流れ時代は大正あたり、今は街で薬屋を営んでいるキヨと人魚。

人魚と夫婦になると不老不死になるといわれ、その通りにどんな大ケガをしても人魚の力ですぐ治ってしまうキヨですが、人の世で自分だけが延々と生きていく死ねない人生に悩んでもいます。

そんなある日、お店のお客でもある妖怪の長(普段はカフェの大女将として暮らしている)に、人魚の言っていることは真実ではない、不老不死の解き方を教えてやると言われて動揺するキヨ。

一方で人魚にもキヨには告げられないある事情がありました・・・。




このお話の人魚は陸でも人魚の姿のまま、問題なく暮らせるようです。体をすごく小さくして瓶の中に入り、出かけるキヨに携帯させたりもします。

人間の姿になることもできますが、足がすごく痛くて体力を消耗するようです。


人魚はとても嫉妬深く、番った人間とずっと共にいるために相手を不老不死にするという設定ですが、この人魚が伴侶に選んだのは同性。

なぜ同性?と思うけれど、これは深い意味はなく、単に人魚がキヨの人柄に惚れちゃったから。

もっとも、この作品を連載していた雑誌はBLコミックの専門誌なので、男×男の設定は必然ですにやり

ベッド(布団だけど)シーンも多いですが、直截的な描き方をしているようでも相手は人魚なので、ファンタジックでさほど生々しくないように思いました。触手系が好きな人なら楽しめるかも(笑)。

ちなみに人間側が“嫁”なのでキヨが女性のポジションです。









この連載誌コミックマージナルは人外BLの専門誌とのこと。BLにもいろんな愛の形があるんですね・・・。

キヨが若い男性でなく中年のおじさんなのは、作者の文善氏が“お人好しのおじさんが好き”だからだそう。



人魚とは関係ないけれど、大女将に仕えている黒猫の妖怪(夜だけ人間の女の子に化けられる)が可愛いです♪

大正時代を思わせる背景も楽しんで読めました。大正時代と人魚って、相性いいですね。