本日の人魚本は先週に続いてコミックです。

先に言ってしまうとこの作品、今日ご紹介する第1巻では

上半身が人間で下半身が魚という形態の人魚は登場しません。

当ブログでご紹介する人魚本の条件は

基本的に上記のような人魚が作品内に出てくる、

あるいはカバーや挿絵に描かれるということなのですが、

本書はこれからストーリーが進むにつれて

もしかしたらイメージ画という形でも人魚が描かれることがあるかもしれない・・・

という期待を持ったのでご紹介します。

 

 



 

「珊瑚と人魚」 ninikumi:著

(徳間書店 2018年9月刊)

※奥付に基いた記載です。実際の発売は8月。

 



 

高校生の少年、珊瑚は幼少の頃事故で両親を亡くし

現在は養父母のもとで暮らしています。

彼には人の嘘を見抜く不思議な力がありました。

嘘をつかれると眼が激しく痛むのです。

両親を亡くした当時、悲しくないと自分自身にも嘘をつこうとした珊瑚。

眼と心の痛みで泣いていた幼い彼のもとに不思議な女性が現れます。

人魚と名乗るその女性は珊瑚に優しく接し、

現在、珊瑚は人魚が営む小さな古書店でアルバイトをしています。

 

人魚は見た目は若い女性ですが、実は千年以上生きています。

かつて恋した美しい男性から“我が一部”だという肉片を食べるよう言われ、

食べた結果不老不死になってしまったのでした。

それ以来、自分とともに生きてくれる人間を作るため

恋した男性に自らの肉を食べさせているのですが、

肉を食べた相手は人魚のように不老不死にはなれず、死んでしまいます。

珊瑚にも自分の一部をこっそり料理に混ぜて食べさせようとしたものの、

珊瑚の“さとりの眼”によって見破られてしまいます。

 

家族のように親しくしているものの、

いつまた人魚が己の肉を食べさせようとしてくるかわからない。

そんな微妙な距離の関係が続いていた珊瑚と人魚ですが、

珊瑚の同級生の少年、灯(あかし)が二人の間に入ってきたことで

変化が訪れることに・・・。

 

 

 

と、ある程度粗筋を書きましたが、

物語はまだ始まったばかりなので、

幼少の頃の珊瑚と人魚の間でどんなことがあったのか、

珊瑚の不思議な力はいつ備わったのか、

遠い昔、まだ人間だった頃の人魚を不老不死にした美しい男性は何者なのか、

などなど、たくさん謎があってこれからの展開に期待が高まります。

絵柄もきれいで読みやすい。

珊瑚は眉毛の太いちょっと個性的な顔立ちですが、

人魚や灯は少女マンガ系のルックスかな。

作品の冒頭で太宰治の「駆込み訴え」の一節が提示されていますが、

これが物語の象徴になっているのか?

いろいろ想像しつつ次巻を楽しみにしています。

 

 

 

ところで“どんな嘘も見抜く力”があったら便利なのか、不便なのか。

珊瑚のように感受性が鋭い(そういう力があったから鋭くなったのかもしれませんが)少年には

酷な能力かもしれませんが、今の私にそういう力が授かって人の嘘が見通せても

ああ、そうなのね~、で終わってしまいそう。ちょっとはガッカリするかもしれませんが。

でも嘘って必ずしも悪いことばかりじゃないですよね。

よく、付き合いたい異性の条件に「嘘を言わない人」というのがあるけれど、

思ったことをなんでも隠さず喋ればいいってもんでもないし・・・。

人を思いやるが故の嘘もある・・・と思いたいです。