上野の森美術館で開催中の「怖い絵」展を観てきました。

 

 

 

関西での開催時から、すごく混んでいると言われていたので

平日のほうがいいかもと思い、病院に行った日の午後に行ってみました。

幸い、朝から降っていた雨はちょうど止んでいました。

美術館の前に来てみたら長蛇とはいわないまでも、けっこうな人の列。

終了時間までに入れるのかなと思ったけれど

意外に列の動きが早くてそれほど待たずに館内に入れました。

 

 

会場内は神話と聖書、悪魔・怪物、歴史、現実など6つのコーナーに分かれ、

「混雑しているので空いている箇所からご覧ください」

とアナウンスがあるものの、一度先へ進んでしまうと

人の流れに逆らって後戻りして絵を見る、ということがしづらいので

結局は展示の順番通りに鑑賞しました。

それに私のお目当てのハーバート・ジェイムス・ドレイパーの

「オデュッセウスとセイレーン」は最初のコーナーの展示だったので

アナウンスに逆らって入り口付近で長々と鑑賞していました(^^;)

 

 

 

ダイナミックで劇的な場面なので私は勝手に大きな画面を想像していたのですが

実際の絵はそれほど大きなものではありませんでした。

でも波のうねる様やセイレーンの腰にまとわりついた海藻は

近づくと流れるような筆の跡が見えて、改めて実物を見られたことに感激。

オデュッセウスといえばジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの

「オデュッセウスに杯を差し出すキルケー」も来ていました。

 

 

 

ウォーターハウスも好きな画家なので、有名なこの絵が見られて嬉しかったです。

 

セイレーンを描いた絵では、フランスの画家ギュスターヴ=アドルフ・モッサの作品も

印象的でした。こちらのセイレーンは人魚ではなく、半人半鳥。

見開いた表情のない瞳、ショールように両肩に被さる美しい羽根、血まみれの鋭い鉤爪は

グロテスクなのですが装飾的に描かれているため美しさも感じます。

ドレイパーと同時代(1900年代初頭)の画家で、解説にもありましたが、

作品はどこか現代のコミックの表現にも通じる感覚があって新鮮でした。

 

注目作で展覧会のビジュアルにも使用されているポール・ドラローシュの

「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、その大きさに圧倒されます。

そして、ジェーン・グレイの純白の衣服の描写の美しさに引き付けられました。

実際の処刑では黒い服を着ていたとのことですが、

暗い画面の中でこの白い服の輝きが、悲劇的な画題を一層強調しています。

 

そのほか、以前に上野の西洋美術館で観て印象に残っていた

マックスクリンガーの幻想的な連作版画「手袋」を再び鑑賞することができ、

改めてその不思議な世界を楽しみました。

ミュージアムショップでは、この「手袋」の版画をプリントした

紙製のブックカバーセットがあってちょっと欲しくなりましたが我慢。

今回は日本にはあまり紹介されていないような作品も多く見られたので

図録を購入しました。あとは好きな作品のポストカード、

そして「オデュッセウスとセイレーン」の布製ブックカバーがあり、

思ったより高かったのですがつい購入してしまいました。

 

(カバーは文庫本型のノートにかけられた状態で売っています。

絵の解説が書かれたしおり付き。)

会計したら予算ギリギリでした(;^_^A

 

ともあれ、平日で天候も良くなかったせいか、

考えていたほどの混雑ではなくてほっとしました。

絵をじっくり見ようとすると

「通路なので立ち止まらずお進みください」と

しょっちゅうアナウンスされるのは確かに煩わしくはありましたが

人だかりで絵に近づけないというほどではなかったです。

なかなか実物を見る機会のない絵もいろいろ来ていて楽しめた展覧会でした。

中野京子氏の「怖い絵」シリーズは面白いので、

展覧会も第二弾があればいいのに、と期待しています。