どこともわからない場所の、怪しげな店が

並ぶ裏通り。得体の知れぬ人々が集う酒場。


以前ご紹介した椿實の小説「人魚紀聞」で

主人公が人魚と出会うのはそんな場所でした。


今回ご紹介する山田章博のコミック、

「人魚變生」の主人公も、場末の盛り場の

路地で、人魚を思わせる美しい少女と

出会います。


足を踏み入れた人を惑わせる、

うらぶれた、怪しげな酒場街。

人魚にはそんな場所が似合うのかもしれません。



mariのブログ

「人魚變生」 山田章博 著

(東京三世社 1982年5月刊)



船医をしていた主人公は、航海の途中に

立ち寄った上海の盛り場で、常人離れした

美しさを持つ少女に出会います。

なぜか全く喋れず、歩くこともできない彼女。

そんな少女に惹かれ、主人公は彼女を

隠れて船に連れて帰り、航海を共にしますが、

やがてあるアクシデントが起こり・・・。




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山田章博の絵のタッチは、今よりやや

曲線的で耽美な雰囲気。

流麗な描線が読む者を異世界に誘います。

本の帯にあるように、まさに「漂うように」

物語の世界に浸れる作品集です。