前クールで評価の高かった「不適切にもほどかある」の
宮藤官九郎さんの脚本のドラマ「季節のない街」
原作は山本周五郎の小説で、黒澤明監督で映画化されたり、
過去にもドラマ化もされてるんですね。
本作では、東日本大震災や津波をナニ、と呼んで暗くなりすぎず
仮設住宅の住民達の生活を描いています。
60年も前の原作と被災生活をどうシンクロさせるのかと不思議に思っておりました。
ですが、そんな心配はまったくご無用、芸達者な役者さんばかりで、濱田岳さん、荒川良々さん、ベンガルさん、三浦透子さんは癖の強いキャラでしたが、ホントに引き込まれました
そして池松壮亮さん、仲野太賀さん、渡辺大知さんの青年部
クドカンだからと楽しいドラマと思って見始めましたが、
一つ一つは、結構重いものもあって。
ホームレスの親子の話、タツヤ(仲野太賀)のろくでもない母親と兄貴の話とか、がんもどき(かつ子)の妊娠の話は、見終わった後は、
ちょっとずーんときます
仲野太賀さん、拾われた男でも思いましたが、ホントに演技が上手。
誰がどう見てもサイテー最悪な長男に依存する母親(坂井真紀)に何度も裏切られて、家族揃って仮設住宅を出るためのお金持も取られ、オーダーしたスーツも取られ…こちらとしては、見限ってしまえ!と思うのですが、考え直し…最後は一人取り残されて、他の兄弟も連れて出ていかれてしまいます。最後まで不憫な子
最後は、仮設住宅も解体され、みんなバラバラになってしまいますが、半助とタツヤの友情もそのままで、かつ子は自閉症気味だったのに笑顔が眩しいキラキラアパレル販売員に。
街ですれ違ってもあえて知らんぷりするのが、暗黙のルールみたいなのですが、寂しいような…。
ここまで描いた後で、これはすべて半助の書いた小説、という設定で、編集さんに読んでもらってたっていうのが、おおっと思わされました。
すべてを読み終わった編集さんには「キャラクターは魅力的なんですけど、コンプライアンス的に…がんもどき、かいわれちゃん、女性蔑視が引っ掛かりました。次はハートフル系の誰も傷つかない系のやつ、お願いしますね」とまとめられてしまいました。
うわ~今までこの街の人達の日常生活をずっと見てきたのに、そうきたかぁ、と膝を打つ思いでした
夢落ちとはまた違う不思議な設定ですよね。
このドラマで、一番衝撃的だったのは、前田敦子さんです。
売れないアイドルグループ(べじっ娘)の一番売れないアイドルとして描かれていました。
仮設住宅のある街でライブをするのですが、トイレでタバコを吸っている間に置き去りにされてしまいます。
工事現場やイベントにある簡易トイレにしゃがんでタバコを吸っているところに強風が吹いてドアが開いてしまいます。
しゃがんだままゆっくり振り返るとそこには沢上(塚地)が見ていました
前田敦子と言えば、あの国民的アイドルAKB48のセンターとして長年君臨していたはず。
まぁ、卒業してだいぶ経ちますし、プライベートでも結婚、出産、離婚もして酸いも甘いも経験してると思います。
このドラマで、女優として演技しただけとは思いますが、この演出、よく引き受けたなぁと感心しました。それぐらいの衝撃度でした。
クドカンの脚本、構成にまたしても唸ったドラマでした。