飲み屋、居酒屋、ビアホール、パブ、クラブ、バー。
酒場も名を変え、カタチを変える。お洒落に、カッコ
よく、時代に迎合していく。シャレた名前に、小洒落
たインテリア。大衆酒場などという、古くさい酒場は、
ひっそりと暖簾を下ろしていく。
とある染め工場には、そんな古い酒場の染め型が残っ
ている。暖簾か半纏に使われたという手彫りの型紙。
人の匂いが染み付いたお店の名前。郷愁を誘う、味の
ある文字。だが今は、日の目を見る事はない。
先日、そんな型紙を使わせて頂き、型付けの練習を行
った。何処にも納品先が無い暖簾を、自分の為に作っ
てみた。部屋に飾って、酒でも飲むかと。でも何だか、
大衆酒場という言葉に酔いしれてしまった。
競馬親父に、汗臭い職人、そして青臭い若者たちの集
いの場。くだらない言葉が溢れる所。誰もが友達感覚
のような心地の良い空間。愚痴や喧嘩も生まれる場所。
ネット社会には生まれない、生き様漂う、みんなの酒場。
個人主義が当たり前になってきた今、何だか少し、大
衆文化に触れたくなる。気取らず、気軽に酒を飲み、
肩の力を抜きたくなる。今日の私は、ダメ人間。そん
な私が許される、大衆酒場に行きたくなる。半てん羽
織った野郎が集う、人情あふれる下町に。
●暖簾・半纏のご相談は、とある染工場まで、どうぞ。
●とある修行僧の印染めコラムは、こちらから、どうぞ。