古今東西の妖精や精霊・スピリチュアルにまつわる作品を取り上げていくコーナーです。
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今回取り上げる本はこちら
題名 「才能ある子のドラマ」
著者 アリス・ミラー
訳者 山下公子
出版社 新曜社
よく聞く言葉で「あなたの感情を感じてください!」とか「膿が出て浄化されたんですよ!」みたいなの、あるじゃないですか。
あれって間違ってはいないけれど、すごーく表面的なところを撫でて過ぎ去るようで、しばらく経つとまた同じようなことを繰り返したりしませんか。似たような嫌なことが起きて、また嫌な感情が湧いて・・・。
そんな人生の問題の根本的な原因を探るヒントになってくれる本だと思いました。
ヒトはその生育過程で、幼児期や子供時代の庇護者との関わりの中でトラウマが出来てしまうことがあるのです。その原因と解消法についての研究です。
子供は庇護者の機嫌を損ねると生きていけないため、親を庇うような抑圧の仕方をするようです。
例えば・・・よくあるのが「父が殴ってくれたお陰でワタシは立派になれたのだ、アレは愛なのだ」みたいな思い癖でしょうか。
大人になったときに同じ状況が来ていつもうまくいかなくなる・・・
そんなとき《本当は責めたい誰か=両親》の代わりに、現在近くにいる誰かが悪いという事にしてしまう。強い怒りや軽蔑を無関係の目の前の人にぶつけることで、無自覚ながら両親の卑劣なやり方を庇ってしまっている。
この構造を知っておくだけでもトラウマ分析は格段に進むと思います。
著者の丁寧な分析と患者さんの症例に触れながら読み手の心も揺さぶられます。
面白いと思った点は、両親がそんな抑圧をかけるような育て方をしてしまう子ほど、鋭くて妙に痛い所を突くようなことを言うことがあったりするのだそうです。だからこそ親の方も自分がひた隠しにしてきた抑圧の蓋が開かないように、子供に対してさらに支配をかけようとする。
もしかしたらそんな親もまた、両親から別の抑圧をかけられていたのだとしたら?抑圧の連鎖は延々と終わりません。
争いのゲームから降りてさっさと自分の人生に戻る事がもっとも世界の平和に貢献できるような気がしました。
そのためには自分が感じるはずだった怒りも悲しみも憎しみも一度は通らなければなりません。とても辛いことですがその後の晴れやかな気分のことを思うと、やった方がいいよ、なんて言いたくもなります。抑圧していた過去の再体験をすると現在起きる出来事もしっかりと感じ取れるようになるからです。
だけどプロの書いた濃い著作物を見て、きついトラウマに向かって行くには良い伴走者(カウンセラー)がいたほうが安全なのかもしれないとも思いました。あまり素人判断でテキトウにやってしまうのも危険があるかもしれません。
私はこの本に出会う前から自分で心の傷をゴリゴリと掘っていってましたが…、誰もが出来る訳じゃないとか、癒える時期があるというのも最近は薄っすら感じるようになりました。何事も無理は良くないですね。
読み物としてはハードな部類だと思うので(特にトラウマを抱えている人にとっては)、心の丈夫な方や心の問題を取り扱うプロになりたいという志の高い方は一度読んでおくと良いかもしれません。
一歩踏み込んだ内容になっていますので、本屋さんのスピリチュアルコーナーにあるライトな読み物に飽きた方もきっと満足いくのではないかなと思います。(他の著者の本をクオリティの面で劣るとか悪いとか言っているわけではありませんので、あしからず)
そして同時に興味が湧くのは、トラウマがない・もしくは限りなくゼロに近いような子供たちが生まれてきたらどんな世の中になるのだろう、ということです。
アリス・ミラーは2010年に亡くなっています。彼女なら何と言うのだろう。
yucca.
お口直しにこんな映画はいかが?
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