37 葬儀の日 | きまぐれデイズ

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セルジュ『(M)バレイ夫妻の訃報が伝えられたその夜、どうやってそれぞれの部屋に戻ったかは覚えていない……2人の死因は馬車が崖から転落したことによる事故死だった……葬儀が行われたのはその翌日、学院の近郊の教会…その日は涙のような雨が降っていた』



パスカル「にしても突然だったな……」


カール「……ああ……あの子はこれからどうなるんだろう?」


葬式にはバレイ夫妻に生前世話になったラコンブラードの教師、生徒ら数人が出席していた


イレーネ、泣きもせず、バレイ夫妻の遺影を静かに抱えている


クルト「なんか痛々しいな」

ネカー「ああ泣いてないってのが尚更な」


セルジュ、遺影を抱えるイレーネを悲しげに見つめている


ジルベールは遺影を抱え涙を流さないまでも死んだように静かな様子のイレーネとそれを見つめているセルジュを見つめて複雑な気持ちになる


ジルベール(悪い夢みたいだ……いつもはうるさいくらい生意気なあいつがまるで人形のようになっちまってる、セルジュもずっと…固まっちまって…)


ジルベール、何を思ったか隣のセルジュの手を強く握る


セルジュ(……ジルベール!)


セルジュ『(M)葬儀が終わるまで、ジルベールはずっと僕の手を離さなかった……父の死の時以来の悪夢のような光景の中、彼の手の温もりだけが生きている現実を感じさせた』


葬儀の後、学院に帰っていく生徒たち

セルジュとジルベールはイレーネが気になり教会に残る


セルジュ「…もう、いいよ……ありがとう」


ジルベール、手を離すが、突如セルジュを抱き締める

セルジュ「……どうしたんだい?」


ジルベール「親を亡くすってさ……あんなに悲しいもんなの?」


セルジュ「ああ……」


ジルベール「元から親がなくて育ったやつと愛してくれた親を亡くしたやつって……どう違うんだろうな?」


セルジュ「……ジルベール?」


ジルベール「……ここに来たばかりの頃、一度だけあいつの家に行ったんだ……おじさんたちは僕に優しくしてくれたけど……なんか向こうの空気に入っていけないのが嫌で二度と行かなかった……」


セルジュ「どうして?」


ジルベール「……(涙を流し)惨めだったんだ!……親に棄てられた同じ兄妹なのに境遇の違いを思い知らされたみたいで……育ての親の元で幸せに育ってるあいつが他人よりも遠く見えたんだ……!!」


セルジュ「(抱き返し)……もしかして……ああいうことをするようになったのは…その時から…?」


ジルベール「…多分…そうかもな……なのにイレーネは休みになると変わらずに僕に会いにきた……うるさいとは思ったけど学院のことを訊かなかったせいか、追っ払うことも出来ないでこうしてきちまった……ま、君がくるまで学院で僕とまともに口を聞いてくれたのはあいつだけだったからかな……」


セルジュ「そうだったのか……」


ジルベール「……あのうちに二度と行かないと言ったら、イレーネは理由を聞かずにただ『わかった、そのうち行く気になったらまた言って、いつでも待ってるから』って………でも、もう……!」


セルジュ、ジルベールを強く抱き返す


セルジュ「……とりあえず、イレーネを連れて帰ろう……今、一番辛いのはあの子だ……帰ったら思いっきり抱き締めておやりよ……君はイレーネの兄さんなんだから」


ジルベール、頷く


バレイ夫妻の墓地


イレーネ、両親の墓地にいつまでも佇んでいる


ジルベール「イレーネ……帰るよ」


その言葉に反応したのかジルベールに駆け寄ってくるイレーネ


イレーネ「お兄ちゃん!……パパと…ママが……!!」

イレーネ、ジルベールに抱きつき、火がついたように号泣する


ジルベール、しゃがみこみ優しくイレーネを抱き締めてやる

セルジュ、持っていた傘を2人の上に翳してやる


イレーネが泣き止んだと同時に雨が止み、3人で学院に戻る


ロスマリネ「随分遅かったじゃないか」


セルジュ「申し訳……ありません」


ジュール「時期が時期なだけに仕方がない……今日は大目に見よう、ロスマリネ……先にバスに入って着替えたまえ……食事は部屋に運ばせる」


イレーネ「ありがとうございます……ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」


セルジュ「すみません……あとよければ……今晩、僕たち……この子についてていいですか?」


ジュール「本来ならあってはならないが今日くらいはいいだろう……君たちに言う必要もないが手はださないでくれたまえよ」


セルジュ「……はい」


まずはイレーネの部屋に着替えを取りにいった後、17号室で順番(勿論レディファースト)に浴室に入り寝間着に着替える


着替え終えた後、ドアをコンコンと誰かが叩く


セルジュ「はい」


セルジュがドアを開けるとそこには3人の食事を持ったカール、セバスチャン、パスカルの姿があった


イレーネ「皆さん……今日は……両親のためにありがとうございました」


カール「いや……君こそ大変だったのに……よく泣かなかったね」


イレーネ「いえ……」


セバスチャン「ほら、喋るより先に食べないと食事冷めちゃうよ……」


イレーネ「はい……」


カールはイレーネに、セバスチャンはセルジュに、パスカルはジルベールにそれぞれ食事のトレイを渡す


セルジュ「みんな……ありがとう!」


パスカル「気が向いたらまた大衆浴場に3人で来いよな」


ジルベール「とりあえず帰ってくんない?喋ってる間に冷めてまずくなるのごめんだし」


カール「ああ悪かったね……じゃあまた」


カールたち出ていく


食事を食べはじめる3人


イレーネ「お兄ちゃん、せっかく持ってきてくれたのにあの態度はないでしょ?」


ジルベール「ホントのことだろ?……ってこんな時でも生意気な口は聞けるのかよ」


セルジュ「まあまあ……とにかく食べよう」


食事を終えた3人トレイを外に置きそれぞれ歯を磨く

イレーネ「あの……」


セルジュ「なんだい?」


イレーネ「今日……お兄ちゃんたちと寝てもいい?」

セルジュ「僕は構わないけど……いいよね?ジルベール」


ジルベール「ま、今日だけならね」


セルジュ「そうと決まったらベッドくっつけようか……ジルベール、君も手伝って……」


ジルベール「僕も?」


セルジュ「当たり前だろ」

イレーネ「じゃああたしも手伝う」


セルジュ「君は……」


イレーネ「女の子だからだめっていうのはなしよ……お兄ちゃん力弱いんだから」


ジルベール「こういう時くらいしおらしく出来ないのかよ……」


セルジュ「喧嘩するなら2人とも追い出すよ」


イレーネ「……ごめんなさい」


ジルベール「わかったよ……」

言いながらなんとかベッドをくっつける


ジルベール「痛ぅ…明日は筋肉痛だ…もう二度とやってたまるか!こんなこと」

セルジュ「普段鍛えてないからさ……イレーネは大丈夫だった?」


イレーネ「さすがに重かったけど……昔ベッドメイクやったことあるから……なんとか」


ジルベール「ちぇっ……いいよな、女は……」


セルジュ「ジルベール!……でも川の字で寝るなんてチロルにいた時以来だ……」

ジルベール「川の字?」


イレーネ「知らないの?パパとママの間に子供を挟んで寝ることよ」


ジルベール「……でも僕たちはこいつの親じゃないだろ?」


セルジュ「いいじゃないか……チロルではいつもそんな感じで父さんと母さんと寝てたんだ」


ジルベール「じゃあ真ん中はイレーネか」


イレーネ「(エヘヘと笑いつつ)ごめんね」


ジルベール「ほんっとに今日だけだからな!」


セルジュ「そろそろ寝よう、ボン・ニュイ」


イレーネ「ボン・ニュイ」

セルジュとイレーネはすぐさま眠りにつくがジルベール、ふてくされたように寝る

※学院での売春的行為