そういうわけで、今月まるっきり新しい映画を観ていなかったことに驚愕した、ひろむです。

新作という意味ではなくて、既に一度観ている映画しか観ていなくて。

新しい作品に触れていない!

というわけで急遽観たのが、この作品。

 

 

あんまり評判のよろしくないアニメ版『GODZILLA』三部作。

どうも3DCGって好きじゃなくて、敬遠してたんですよ。

なにかゴジラも鈍重そうなデザインだし。

でも友達に勧められて観たNetflixでやってる『ゴジラS.P』が面白くて。

まだやってる最中で、毎週の配信が待ちきれん!というわけで、これに手を出しました。

『ゴシラS.P』とは何の関係もないんですけどw

 

実を言うと『ゴジラS.P』も、これと同様黒歴史になるんじゃないかと思っていたんですが

なかなかどうして面白い!

試しにと思って見始めて数分後に「ジェットジャガーだ!」と食いついていましたw

友達に「ジェットジャガー出るよ」と言われて、「なぜ?」と頭に疑問符が浮かんだんですが

うまいこと物語に溶け込んでいてビックリしました(@0@)

それどころか大活躍するジェットジャガーwww

「これはアニメだからと侮れんな!」と思って、こっちも観てみたんですが、

結論から言うと「うーん・・・」。

脚本書いてる人の違いなのか、こんなに差が開くか?と思えてきます。

 

『ゴジラS.P』の脚本書いてるのは円城塔。

ものすごくざっくり言うと、日本SF界のすごい作家。

僕は伊藤計劃と共著の『屍者の帝国』しか読んでませんが、

ともかく小難しい言葉が頻出する人だというのは、わかりました。

冒頭の伊藤計劃の小気味の良さとは大違いw

遺稿を元にしてるからエッセンスは伊藤計劃なんですけどね。

で、こちらは虚淵玄。

僕は観てないけど『魔法少女まどか☆マギカ』の脚本書いてる人です。

『PSYCHO-PASS』は観ていて、面白かったから期待していたんですよ。

期待していたんですけどね・・・。

 

なんだろう、一言で言うと「残念」。

なにやらゴジラを知らない人に作らせてみて、今までの発想に囚われない

新しい物を作ろうというコンセプトだったようなんですけどね。

いや、コンセプトを否定するつもりはないんですよ。

『シン・ゴジラ』まで、かなりマンネリ化していたのは否めないし。

とはいえ怪獣プロレスではない、さりとて人間ドラマでもない、という

中途半端な物が出来上がってしまった感じです。

怪獣プロレスにしたくないなら、半端に他の怪獣を匂わせるべきではないと思うんですよ。

ちょいちょい他の怪獣が出てきそうな予感はするものの、本当にシルエットが

チラッと見え隠れする程度で出てこない。

初代『ゴジラ』や、『シン・ゴジラ』のようにゴジラという脅威に、

人はどう向き合うのか?という話でもない。

 

向き合ってはいるんですよ、一応。

ただなぁ、別にその脅威がゴジラじゃなくてもいいんじゃないの?と。

“圧倒的な破壊力を持った倒すべき敵”というのは、わかるんですよ。

なにしろゴジラのおかげで地球を追われて、宇宙を放浪してるくらいですから。

宇宙移民のために巨大船で宇宙を放浪という設定の時点で『マクロス』の影が

チラチラしてるんですけど。

地上から衛星軌道上の物を狙撃できるゴジラの熱線の威力も、マクロスの主砲と

かぶってるし。

ある日突然地球を凌駕する科学力をもった宇宙人がやってくるというのも

『幼年期の終わり』のイメージがダブる。

加えて言うなら、地球の生態系は『戦闘妖精・雪風』の惑星フェアリィに似てる。

 

外宇宙を放浪した後、いろいろあって地球に帰ってくるんですけどね。

いざ地球に降りてみたら「宇宙よりマシなのは気圧と重力くらいのもの」である事が判明。

ゴジラもいるし。

そこで登場人物が言いだしたのが

「月面に居留地を作って、地球からは資源だけを回収すれば良い」。

なぜ最初からそうしなかった?

ゴジラがいなければ良いという前提なら、わざわざ外宇宙へ行く事はなかろうに。

『マクロス』なら、太陽系が戦場になる宇宙戦争に巻き込まれるかもしれない、という

前提があるから、太陽系外の星にも移民・植民地開拓しましょう、もわかるんですけど。

別にゴジラから逃れるという前提なら、ものすごい技術力で太陽系外へ

出て行く必要ないよね?と。

ゴジラの熱線が、月まで届くというわけでもないし。

外宇宙へ進出できる時点で『ガンダム』より科学技術が発展してるんだから、
月面に恒久都市を造るくらい容易いだろうに・・・。
それが1作目の中盤の話。

なにか、一事が万事その調子で。

設定のための設定とでも言うべきか、必然性がない事が多い。

物資や時間の不足という展開も「尺の都合で」というのが透けて見えるし。

 

ゴジラも史上最大の触れ込みで、確かに全長300mはシリーズ史上最大。

・・・なんですけどね。

なにしろ比較対象が存在しないので、よくわからないんですよ。

例えば、スカイツリーみたいに、なんとなくでも高い建物のして認識している物より

大きければ、ある程度実感できると思うんですけど。

あと鬱蒼と茂る森林地帯や、荒野をゴジラが破壊しても、直感的に脅威を感じられない。

これは『巨神兵東京に現わる』を観て思ったことなんですけど、

理由もなく町並みが破壊されていくのは、圧倒的な暴力として恐怖を感じました。

最後の巨神兵の群れの恐ろしいことと言ったら。

『風の谷のナウシカ』の冒頭部分とは比較にならないですよ。

そこへ行くと人類の側が、森林を爆撃する姿の方に嫌悪感を覚えます。

ベトナム戦争で熱帯雨林を焼き払ってる風景に重なるので。

ゴジラより、よっぽど酷く感じられます。

 

そしてなにより登場人物、特に主人公に共感できない。

“打倒・ゴジラ”を胸に誓ってるんですけどね。

直情的だし、言動がむちゃくちゃ。

主人公の中の人が宮野真守なのも相まって、いつか「俺がガンダムだ」って

言い出すんじゃないかとw

ミサトさん同様、とても上司にしたいタイプではありません。

部下にもしたくないけど。

個人の都合で動いて、周りの意見は聞かずに猪突猛進、勝手にドツボっていくって、

そもそも組織に馴染まないタイプ。

『PSYCHO-PASS』の狡噛とかタイプが近いかも。

でも書いていて思ったのは、たぶん一番近いのはジャイアン。

「なに?その剛田イズム宣言は?」というシーンが、ままある。

しかも悪いことに、この人軍人なんですよね。

一番向かない職業だと思うんですけど。

 

例えば前述の「月に居留地を〜」のくだり。

決死隊で地球に降りてみたら、脅威がゴジラだけでないというのがわかって、

司令官が下した命令は「撤退」。

そりゃあ、いくら決死隊と言っても、あくまでゴジラを倒すのが目的であって、

その他の目標に全滅させられたのでは、割に合いません。

大気組成も人が呼吸できるものじゃなくなってるし。

指揮官として妥当な判断と言えるでしょう。

ところが主人公が言い放ったのは「今さら臆病風か!」。

いやいや、ゴジラより格下に苦戦してるんだから。

しかもゴジラだけ倒せば良いという話でもない。

怪獣がウヨウヨしてるところなんて住めないだろう。

この時点で彼にとって地球に帰還するのが目的なのか、ゴジラを倒すのが目的なのか。

 

元々は“ゴジラを倒す→地球に帰還”の流れだったのが、

“ゴジラを倒す→その他の怪獣も排除→人間の住める環境の確保→地球に帰還”と、

プロセスが増えているのに無視。

「それを打ち倒さねば己になれない」とは『HELLSING』で闘争の本質として

提示された言葉ですが、まさにこれ。

なにか戦う理由を正当化するために、他の理由をこじつけているようにしか見えない。

“手段のためには目的を選ばない”になっている気がします。

個人的な感情を吐き出すことが、事態を突破するうえで

 一番重要なことではないかと感じたのだ」

とはクワトロ時代のシャアが、一年戦争の頃の自分を振り返って言った言葉ですが、

この主人公の場合、完全に方向性を間違えてる。

シャアは二手三手先を考えて動いていたけど、目先のことしか考えてないですからね。

 

なにかっていうと「ゴジラから地球を取り戻す」って言うんですけどね。

ものすごく違和感があって。

仮に“宇宙人が攻めてきて地球を追われた”なら、わかるんですよ。

でも怪獣は純地球の存在ですから。

その上、ゴジラを頂点にした生態系までできあがっている。

言ってしまえば“人類が自然環境に負けた”状態なわけですよ。

単純に生存競争に敗れたわけで。

それを敗者復活戦で「地球を取り戻す」と言われても。

“栄華を極めた万物の霊長たる人類が負けていいはずがない”

“地球の王の存在に返り咲く”

という主張にしか聞こえてこないんですよ。

それは、傲慢ではないのかね、と。

つまるところジャイアンの「お前の物は俺の物、俺の物は俺の物」という理屈と

同じにしか感じられません。

 

はたまた物語が進んで、主人公に指揮権が移ってからのこと、

ゴジラを倒すための作戦を立案・実行するんですけど、これが単なる特攻作戦。

まぁ、百歩譲って、いずれにせよ負けてしまえば、そこで終わりという状況ですから、

それもやむなしとは思うんですけど。

ヒロインが、その作戦に参加してるとわかったやいなや言い放ったのが

「わかってるのか?これは事実上の特攻なんだぞ!」

いやいや、お前が立案したんだろ、と。

惚れた相手であろうがなんだろうが、総力戦なんだから否応なく参加だろ。

総力を挙げての特攻作戦を立てておいて、ヒロインの作戦参加は反対って・・・。

 

「軍人が口に出してはいけない言葉はいくつかあるが“戦争反対”と“永遠の平和”と

“人命尊重”は、その最右翼だ」とは、エリア88の司令官サキ・ヴァシュタールの言葉です。

曰く「自分で自分を否定することになる」。

でも、平気でそれを口にしてしまう主人公w

他のやつは何人死んでも構わないけど、ヒロインには死んで欲しくないって、

とんだ公私混同ですよ。

志願制なら、まだわかるけど全員参加の総力戦ですからね。

そもそもの作戦立案能力を疑います。

しかも先陣切って特攻していくし。

死んじゃったら、誰が後を引き継ぐんだよ・・・。

 

他の物語でも思うんですけど、無理にラブの要素を入れる必要ってないと思うんですよ。

それに割く時間で、他の部分を掘り下げた方が良いと思うので。

典型的な二兎を追う者は一兎をも得ず。

共感できない主人公に、活かしきれていない設定と、物語に没入できないんですよ。

面白くなりそうな要素は数々あるのに、本当に残念。

こちらもNetflixが出資しているであろうに。

 

まだ書き足りないので、久しぶりに後編に続きます。

前編は叩きまくったので、後編は良かった点を書いていこうと思います!

 

≪後編に続く≫