こんばんは、鳥子です。
夜も短くなってきたこの季節、なかなかBL小説に手が出ない、だらけた時間を送っています。
『花嫁は貴族の愛に奪われる』 遠野春日、大洋図書、2007年
私は、BL花嫁モノを、心から愛する。
あまりに愛するので、本棚のBL小説のスペースには、二冊に一冊の割合で「花嫁」の文字が並んでいる。
一見、ハーレクインマニアのようである。
そんな中、最近もっとも心奪われたのが、この一冊。
ありきたりな時代モノであり、受がほぼ9割女装している。
だからなんだ、ホモじゃなくてもいいじゃん?というツッコミのない世界が、BL花嫁モノ。
絶対ナイナイ、なんて思ってはいけない。
主人公、彩人は貴族の庶子。
父親の命令で伯爵家の孝雅と結婚することになる。
……女装して!
いやあ、もうこれね、政略結婚、無垢乙女教育、しかもはじめてナイト!というね、萌えをすべて凝縮してくださっているのです。
遠野春日リスぺクト。
脱力気味の複線回収も、問題解決も、そんなことはどうでもいい。
私ははじめてナイトにどれだけ萌えるかで、その作家のBLクリエイターとしての能力が決まるんじゃないかと思うくらい、はじめてに重きを置いているのである。
(個人の主観であるから、ちげーよというツッコミはご勘弁願う)
その点、この作品のはじめてナイトは完璧だ。
―――何が何だかわからなくなってきて孝雅にしなだれかかった彩人を、孝雅はしっかりと抱き支え、寝台に連れていく。(133頁より)
他のエロ描写より、評価したいのはここ。「何が何だかわからなくなって」というのが、いい。
たまらなく、いい。
細かく言えば、遠野春日はその時代や舞台設定を文章に投影するのがとてもうまいので、ここで言うならば、ベッドではなく、「寝台」というのが、いい単語選択なのだ。
挿絵がなくとも、情景が浮かぶ。
さすがの筆力である。
(筆力と構成力とはまた別のものと考えるべき。遠野春日のジェットコースター展開は、骨太なBLを読みたいと思う人には物足りないと思う)
二人が完全に身も心も結ばれる下りは、単調である。
昔から孝雅は彩人が好きで、無理にでも嫁にして、それを悔みつつ、体を奪うことをやめられなかった。
彩人は花嫁として扱われるうちにいつの間にか、孝雅を好いている自分に気がつくが、孝雅にとってこれは何かの計画のひとつだと思い、その思いを告げることができない。
よくあるパターンだ。
けれども、すべての不満など、はじめてナイトの素晴らしさと、以下の孝雅のセリフで飛んで行ってしまうのではないか。
「私が君を想う半分でよいから、私を愛する努力をしてくれないか」
なんてけなげな告白なのだ!!!
攻のくせに、この謙虚さ!いろいろ他の作品の攻にも見習ってほしいところである。
攻も受もどこまでもけなげに互いを想っている。
そんな、心温まる作品だ。
表紙もハーレクインで、いい。笑