「どこに行きたいですか?」
 
 
「どこでもいいです」
 
 
 
 
はいはい。
 
いちばん困るお返事ね。
 
 
 
 
京都に行ったら二条城と京都御所を見学したかった夫。
 
生憎、二条城も京都御所も年末年始のため見学はできない。
 
しかも、京都御所の見学は予約制だから
 
行き当たりばったりの旅では、年末年始でなくとも
 
見学は無理なのだ。
 
 
 
 
 
二日目の見学先を二条城とその周辺と決めていた私たちが
 
考えに考えて決めた行き先は、結局、嵯峨野嵐山。
 
なーんだ、京都旅行の典型的パターン通り。
 
 
 
「トロッコ列車がありますね」
 
 
 
決め手は夫のこのひとことだった。
 
 
 
「でも、前に行った時に満員で乗れなかったよ」
 
「予約制と出ていますね」
 
「今からじゃ予約は取れないんじゃない?」
 
「当日でも乗れます、と書いてありますよ」
 
「じゃあ、運が良かったら乗れるかもしれないね」
 
 
 
実は私は修学旅行でも嵯峨野に行っている。
 
10年ちょっと前に
 
犬友だちさんに会いに京都に行った際にも
 
嵯峨野には行った。
 
 
 
竹林の道は人で溢れていて
 
トロッコ列車の駅のホームは人が入りきらないほどだった。
 
だから、今回の急に決めた京都の旅では
 
出発前からトロッコ列車の乗車は諦めていた。
 
 
 
トロッコ列車の予約状況を調べると
 
どの時間の列車にも○印が付いている。
 
 
これは、きっと乗れる。
 
 
それを信じて期待に胸を膨らませて
 
JRの嵯峨嵐山駅に着いて
 
トロッコ嵯峨駅へ向かったら
 
ガラガラのトロッコ列車が発車ベルとともに走り去った。
 
 
 
 
残念ー!
 
 
 
 
って、残念なのは1時間に1本の列車を逃したから。
 
列車はガラガラなのです。
 
悲しくなるほどにガラガラ。
 
 
 
 
駅員の女性たち
 
私と夫の姿を見ると嬉しそうに近寄ってきて
 
次の列車の乗車を勧めてくださった。
 
 
 
まるで子供な私は
 
もちろん窓なしの展望列車のチケットを買い求めた。
 
 
亀岡までの往復。
 
亀岡に着いたら待ち時間5分のとんぼ返り。
 
 
 
 
駅員さんは
 
1時間後の列車を駅で待っているのはもったいないから、と
 
嵯峨駅の次の嵐山駅までの散歩を勧めてくださったから
 
素直にそれに従って
 
竹林の間の道を歩いた。
 
 
 
 
 
嵯峨野に来るのは3度目だったけれど
 
竹林の道は
 
ほんのさわりの踏切までしか歩いたことがなかったから
 
これも天の計らいかと感謝をして歩いた。
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
かの有名な観光地には人影がない。
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 
 
 
天の計らいのおかげで
 
嵯峨野の竹林の道の
 
人の姿の入らない写真を撮れるなんて
 
ああ、なんということでしょう。
 
 
 
 
ラッキー!
 
と喜んでいる場合ではない。
 
 
これが今の日本の現実。
 
 
 
ゆったりとした嵯峨野を楽しみながらも心がヒリヒリする。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

前を歩く見知らぬ女性連れは

 

どんな想いでこの道を歩いていたのだろう。

 

 

 

知る由もないけれど

 

それでもたまにすれ違う人たちの目は

 

明るそうに見えた。

 

 

 

 

GoTo中止前、最終日に嵯峨野を歩いている観光客は

 

ある意味、猛者だから。

 

マスクを外さなくても、きっとね。