髪を切りたかったから
行きつけの美容院に予約を入れた。
念のため
マスクを着けないで施術していただけるかを尋ねたら
「着用をお願いしています」
と答えが返って来たから、予約を取り消した。
それでもどうしても髪を切りたかったから
飛び込みで近所の美容院に行って
ノーマスクの可否を尋ねたら
やはり「マスクを着用をお願いします」と言われてしまった。
肺活量が少なくて息苦しくなるため
4時間も連続してマスクを着用するのは無理です、
と訴えたら、
「マスクが苦しい方にはこれをお配りしています」
と小さな布切れのような物を差し出された。
そのお店の店長らしき人物が言うのには
その布は粘着性があって、口に貼り付けて使うのだそうだ。
ちょうど、強盗犯に粘着テープで口を塞がれている様子を
思い浮かべていただくといいか、と 思う。
「これだと、耳が痛くなりませんから」
得意げに美容師は言っているけれど
私が訴えているのは「息苦しい」なのだ。
分かっていない。
でもねそれ以前に、
私は囚われるの?
私は囚人なの?
そんな気分になってしまった。
そんなテープ(のようなもの)で口を塞いでまでして、
このお店で髪を切りたいわけはない。
それよりなにより
口をテープ(のようなもの)で塞ぐことをお客に強制する店になんぞ
お金は使いたくない。
「他のお店に行きますから」
そう言って、そのお店を後にして他の店に行った。
けれど、2件目のお店でも
同じテープ(のようなもの)を差し出された。
「こちらを口に貼り付けていただきます」
え?
本気で言っている?
その
強盗犯が人質の口をふさぐような物を着けろ
と客に本気で言っているの?
私の問いに、若い女性は目を丸くするばかりだ。
どうやら、顔に変な物を貼り付けることに
何も疑問を感じていないらしい。
いやいや
驚いた。
でも、驚いている私の方が変人扱いだ。
そうか。
他の客は受け入れるのだね。
なぜ、何も感じないでこのようなシール型のマスク着用を
しかも、半強制です
それを他の人は受け入れる?
私には到底受け入れられないから2軒目も断った。
そして、3軒目にして
ようやく
ノーマスクで施術をしてくれる店があったから
めでたく髪を切ってカラーリングをして
パーマもトリートメントも、していただいたわ。
電話予約を入れた店も含めれば3軒のお店は
健康な私から
1万6千円を儲けそこなったわね。
馬鹿馬鹿しい
というか
ただただ驚いた1日だった。
紀尾井町ガーデンテラスのレストランで
ランチを食べてお喋りをしてから
カオルさんと少しだけお散歩をして別れた。
私はその後もテラスに残って
周囲をノーマスクでほっつき歩いた後に
フレッシュネスバーガーでレモネードを飲んだ。
少し暗くなってから
街路樹に光の粒が咲いた。
もうすぐ師走なのだね。
この馬鹿馬鹿しい騒ぎは年を越してしまうのかな。
マスク姿の人たちばかり歩いている街を歩くのは
なんだかもう耐えられない。







