昨日の映画撮影の続き。

 

映画の中にもあるが、パガニーニはロンドンで

大成功し、これまでにない、最も熱狂的な賞賛を

あびた。

というのは、彼は演奏中に弦を次々と切っていき

一番低音のG線だけが残ったが、この1本の弦だけで最後まで演奏した。

 

どうやらこれはカミソリの刃を使ったのだろうと

思われているが、「この説明では僕にはしっくり

こない」とデイヴィッド。

もしも3回切るたびに曲を止めたくなかったら、

5本の指を常に弓に添えていなければならない。

(つまり、弓を持つ手にカミソリも持って切った

ことになるから、常に弓を押さえている必要があるってことね。

つーか危なくない?)

 

 

「我々が知る限り、パガニーニは切れた後は演奏を

 止めていない。

 だから、たぶんそれは剃刀の刃ではなかったの

   かもしれない。

 僕が映画の中でやった、似たようの方法だった

   のではないだろうか。

   人差し指のリングに刃を埋め込んでおいて

    切るような」

 

↓これですね。

どうやらデイヴィッド、これリアルにやったらしい。

 

 

 

ロンドンでのシーンは、ミュンヘンのBavaria Film GMbHスタジオで

行われたが、外は素晴らしい夏の気候なのに、スタジオの中はロンドンの

冬だった。夏の高気温を除いては。

たとえ、黒い毛皮のコートを脱ぐことを許されても汗をかいた。

(↑聞いてるだけで暑い)

エキストラもそうだったろうし、彼らの機嫌をキープしてもらう

必要があった。

彼らはプロフェッショナルではないので、映画製作のストレスや

緊張に適していなかった。

 

そしてそれは起こった。

ウィーンのコンサートホールでロンドンでの

アメイジングなパフォーマンスシーンを撮影して

いた時のこと、

ステージの照明器具に技術的な不備が生じ、

撮影をストップしなければならなかった。

たくさんのエキストラのムードは見るからに

悪化していった。

 

何が起こったか?

エキストラがストライキを起こすリスクになった?

NO。

デイヴィッドは、このフィルムのためにパガニーニの

グァルネリ・デル・ジェスの複製品を得ていた。

だからそれを取って、彼らのためにソロコンサートをしたのだ。

まるまる90分。

バッハのシャコンヌからパガニーニのカプリースへ

つないだ。

技術的不備が修正され、グリーンライトがつくまで。

 

「僕は、別に気軽な気分でそうしたわけではない。

 だけど、次に撮影しなければならなかったのは

 恍惚としたコンサートの観客の姿だったから」

 

↑いいなあ。よかったじゃん。

 

色々あって、クランクアップしたのだが、
後日談がある。
パガニーニは悪魔的な雰囲気を出すために、長髪で
黒髪だったのだが、デイヴィッドは撮影に入る前に
髪を染めるかカツラをかぶるかを決めなければならなかった。
カツラはちょっと不自然なので髪を染めることにした。
だけど、事前に美容師に、撮影後に髪を元の状態に
戻すことに問題はないかと聞いておいた。
彼は”もちろん、僕は3時間以内でできるよ。
なぜなら僕はこの分野のエキスパートだから”
 
OK、そういうことならわかったよ。
ということで撮影の間は黒髪に染めていた。
そして最終日、美容師はやってきた。
デイヴィッドは次の日アメリカに行きたかったので
彼はすぐに仕事に取りかかった。
彼は道具をいじくりまわし、デイヴィッドの頭は
箔(アルミホイルみたいなの)で覆われた。
デイヴィッドは30分後に気づくのだった。
あれ、普通は箔をあげて途中にチェックしたり
するものだけど彼はしない。
ほとんど目は覆われてたけどその隙間から彼の様子を
見たら、スマホをいじったり雑誌をめくったりしている。
デイヴィッドは、自分の髪の色を元に戻すような
重要な仕事をこんなに淡々と過ごすとは立派な
専門家に違いないと思った。
が、だんだんその評価が疑わしくなってきた。
もしかしたら彼の自信は単純に能力がなくてとんでもない
傲慢なやつなんじゃないかと、心配し始めた。
 
結果、そうでした。ハハハハハハハ。
いや、デイヴィッドにとっては笑い事ではなかった。
ホイルを外した時、デイヴィッドの髪の半分はまだ
ホイルの内側に垂れ下がっていて、残りはもう
髪には見えなかった。
まるでアップルソースのようだった。
デイヴィッドの髪は溶けて、化学的に再結合したのだった。
この有様で、美容師はどうしたか。
 
彼は誠意のない謝罪をしたがこの大惨事への
責任からは逃げた。
”これはコンディショナーだ。1週間ずっと使って”。
デイヴィッドは、次の日目覚めて自分の髪を触ってみた。
1週間まるまる日光のもとで乾燥させた藁みたいな
カサカサとした縮れた音がした。触ってもそうだった。
 
文句を言っても仕方がない。
ダメージがついてしまった。
ニューヨークの知り合いの美容師のところへ行った。
彼は”元のブロンドに戻るまで6週間ぐらいはかかるかな”といった。
 
「あの自分のことをエキスパートとか言ってた美容師は3時間で戻ると言ってたじゃん!」
「もしもまた髪を黒く染めなければならない時が
あるなら、僕は絶対カツラを選ぶ!」
 
と固く誓ったデイヴィッドなのであった。
(🤣🤣🤣)
 
いやー災難だったね。デイヴィッド。
できるというけど、実は大したことない。
海外ではあるある。
一方、日本人は大したことないですよって言ってるけどやってみたら完璧、みたいな〜。