イスラエル・チェンバー・オーケストラのGil Shohatが
2005年の夏のイスラエルツアーに誘ってくれた。
最初はイスラエルフィルと、
それからイスラエル・チェンバー・フィルとで、
テルアビブ、エルサレム、ハイファとイスラエル中で
両手を広げて歓迎してくれた。拍手のシャワーと純粋に
暖かくて愛情を持った態度で受け入れてくれた。
↑以前、2013年だったかのイスラエルでのコンサート
に行った時、デイヴィッドはイスラエルフィルと
ジョイントするの初めてだ的に書いた覚えがあるんだけれど
違ったわ。もうすでに経験があったんだね。
いや、その時もねブラームスのコンチェルトを
ズービン・メータ、イスラエルフィルと弾いたんだけど、
間に、ブラームスのピアノクインテットを
ファーストヴァイオリンとしてチェンバーオーケストラと
演奏したのよ。
だから、珍しいなデイヴィッドがチェンバーやるなんて
って思ったんだけど、そういう縁があったのかと、
10年経ってわかったわ。
デイヴィッドは、
こうして、摩天楼に住むDaniel Kuhnのおかげで
イスラエル・チェンバー・オーケストラのGil Shohatと
知り合い、夏のコンサートに招待してもらい、
アパートの賃貸料や冷蔵庫の食料のストックを心配する
ことはなくなった。
摩天楼Danielは心理学者だったのだが、彼は自分のネット
ワークを使ってデイヴィッドをコンサートに招待して
くれるよう便宜を図ってくれたりした。
その後、2005年の秋にデイヴィッドの兄アレックスも
司法試験に合格しニューヨークの法律事務所に就職が
決まった。
ので、二人でアパートをシェアしようということになった。
ブロンプトンホテルは、ロンドンの典型的なオールドホテル
で、エレベーターはなく、その代わり細い階段に
カーペットが敷いてあって,薄暗い天井の照明、
ハンモックのようなマットレスの戦前のベッド、
これ以上はないというほどのミニマムなレセプション。
↓確かに
だけど、デイヴィッドは気に入っていて常宿にしていた。
このホテルは、壁も薄くて、隣のテレビの音が丸聞こえで
番組まるまるわかるぐらいだった。
ある夜、クレイジーな時間帯に、デイヴィッドは
ヴァイオリンコンチェルを頭から最後までフルで弾いた。
最後の小節が終わった後、何が起こったか?
向こう側の壁から見えないオーディエンスが拍手を
していて、隣のドアからは歓声が聞こえたのであった。
(↑この話、前インタビューで言ってた。
これはとても粋な話。
もしも日本でやってたらどうだったろう。
聴くに値するものだったら、わたしも夜中でも
拍手をするほど粋な人間でありたいものだ)
このオールドホテルに関してはまだストーリーが
ある。
あるとき、またロンドンで仕事があったので、
ニューヨークのガールフレンドを誘って、
このオールドブロンプトンホテルに
宿をとったデイヴィッド。
彼女はものすごくリッチなお家の出だった。
エレベーターがないブロンプトンホテル。
宿について、彼女のミドルサイズのスーツケースを
デイヴィッドが持って階段をのぼる。
彼女は「このホテルはエレベーターがないの?」
と言った。
デイヴィッドはジュニアスイートを予約していて
そこはスタンダードよりも5平米以上大きかった。
彼女、アレグザンドラはこの部屋にショックを受けて
いるように見えた。
デイヴィッドは、二人のスーツケースを置いて
荷物を出して整理していたのだが、その横で
アレグザンドラは電話をとってダイアルを回した。
「どうしたの?」とデイヴィッド。
「ごめんなさい、ハニー。」
彼女は冷静を保とうとしているように見えた。
「だけど、私はここで夜を過ごしたくはないの。
もしあなたがロイヤルアルバートホールで弾くのなら
あなたにはもっとふさわしいところがあるわ。
私に任せて」と
デイヴィッドは驚いた。
デイヴィッドの男としてのプライドがほんの少し
傷ついたせいもあるけれど、ごく親しい友人からの
招待であってもいつも受けるのを躊躇っていた。
自分で払うことに重きを置いていたからだった。
「荷物を詰めて」とアレグザンドラは確固たる言い方
をした。
デイヴィッドは、スーツケースを下に運んだ。
外に停まっていたタクシーに乗って,再び停まったのは
まばゆいばかりのクラリッジズホテル。↓5つ星〜
テニスのボリス・ベッカーがウインブルドンがあるときは
常宿にしていたようなホテルだ。
アレグザンドラはレセプションでキーを受け取り、
デイヴィッドをプレジデンシャルスイートに導いた。
隣の部屋にはU2のBonoが泊まってた。
デイヴィッドは、
「1泊いくらかなんて知りたくないけれど、それを除いても
全く納得がいかなかった」と書いている。
断る選択肢のない状況に追い込まれたことがデイヴィッドの
心のあらゆる部分に反するものだった。
仕方がないので、その一晩だけは付き合ったが、
次の朝は、独立心が勝った。
デイヴィッドは、自分の荷物を詰めて姿を消した。
「悪く思わないで。だけど僕はオールドブロンプトンの
方が好きなんだ」
↑デイヴィッド、よくやった!
5つ星ホテルから出てきて、2つ星のブロンプトンホテル
に戻ってきたデイヴィッド。
「スーツケースを引きずって狭い階段をのぼることが、
そして、古くてへこんだマットレスにこの身を
投げ出すことが幸せなんだ」
と書いている。
と、ここでまだ終わらない。(長くてすまん)
デイヴィッドってばこんなに愛しているオールドホテル
だったのに、あるときレセプションから水が漏れて
来るんだけど、バスルームのお湯出しっ放しじゃない?
と言われた。
4階の部屋だったんだけど、バスルームのドアを
開けたら足首まで水がバスルームに溜まってた。
これ以来、デイヴィッドはこのホテルに姿を見せていない
ということらしい。
残念ねえ。
日本だったら排水口がついてるから
こんなことにはならないけどね。