スタンド・バイ・ミーの世界 | ブルパのみゅみゅみゅMUSIC&NOVEL


小学生の頃、家から歩いて7、8分のところに、かなり大きな原っぱというか空き地がありました。

全く整備されておらず、草は伸び放題で、春から夏にかけては蝶々やバッタやカマキリ、秋になるとトンボやコオロギが遊ぶ、虫たちにとってはかなり居心地のよさそうな場所でした。

草が生えていない場所は、長年子供たちの足で踏み固められ、キャッチボールやサッカーをするための大切なグラウンドで、正月には凧揚げや羽根つきをする子供たちの姿もちらほらと。

窮屈な住宅地にポッカリあいた、子供たちと虫たちの世界、そんな場所でした。

僕は外で走りまわることよりも、大人しく部屋で本を読んでいるような子供でした。

しかし、ある夏休みに、誰もいない時間を見計らって空き地に行き、半ズボンと半袖のシャツから飛び出した剥き出しの脚と腕を鋭利な草に擦りむきながら、それでも背丈ほどにも茂った草をかきわけて、空き地の奥の誰も行かない樫の大木の根元まで行ったことがあります。

大きく枝を伸ばした木の下は、肌を射すような夏の陽射しを遮断し、頬を吹く風もいくぶん涼しく感じるほどで、その根元から少し離れた赤っぽい土をシャベルで掘って「あるもの」を隠したのです。

親にも、兄弟にも、親友にさえ秘密の、僕だけの宝物をそっと埋めました。

僕にとっての「スタンド・バイ・ミーの世界」といってはカッコつけすぎかもしれませんが、誰も知らない自分だけの世界が、あの日、あの瞬間、あの場所には、確かに存在していたと思います。

今でも時折ふと想い出す、草いきれに鼻腔をくすぐられるような感覚と懐かしさは、あの空き地の想い出とともに、生涯忘れることはないと思います。


さて、子供時代を思い出し、思わず胸がキュンとなってしまう映画や小説は誰にもあると思いますが、僕にとってはこの作品がそうなのですが『鉄塔武蔵野線』を紹介したいと思います。

これは第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した銀林みのるさんの作品で、後にそれを原作として映画化もされ、主人公は伊藤淳史さん(電車男というか西遊記の猪八戒)が演じているのですが、生き生きとした幼い日の彼の姿を観ることができます。

小説は著者の意向により、ハードカバーと文庫では結末が変えられているようですが、僕はわかりやすい映画をだんぜんお勧めします。

お子さんと一緒に観てもいい作品だと思いますが、僕は知らず知らずに涙が頬を伝っていたので、涙を見られたくない見栄っ張りなお父さんは一人でご覧になったほうがいいかもしれません。秋の夜長にぜひどうぞ!!

                   (道秋ナオ)

鉄塔武蔵野線

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鉄塔 武蔵野線 (ソフトバンク文庫 キ 1-1) (ソフトバンク文庫 キ 1-1)/銀林 みのる

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