みずきくんの仕事先へ、一人の女性が訪ねてきた。
みずきくんの携帯の電話番号が判らなかった(最近変えていたのだ)ので、悪いとは思ったけどお仕事先に来てしまったのだという。
その女性は、みずきくんと高校時代に同じクラスで一緒だった人だ。
彼女の用件とは、同窓会の報らせだった。
急ではあるが、20日後に同窓会を急遽開くことになったという。
担任だった先生が、九州の高校に転任することになった為、その先生の送別会と同窓会を兼ねて、久々に皆で会おうということになったのだと、彼女は一息にしゃべった。
ついては是非出席してほしいし、あなたの友達のマカ君や朝やんにも連絡を取ってほしいということだった。
あけちゃんやゆかちゃんやみゆきちゃん、それにユリちゃんやヒサミツ君たちも出席すると、彼女は云った。
みずきくんは出席したい思いは強かったが、仕事の兼ね合いもあり、返事は保留した。
マカ君には連絡取れるけれど、朝やんには連絡が取れないとも告げた。
朝やんは数年前に、仲間うちから突然に消えてしまったのだ(神隠しにあったみたいに)と、その女性に告げた。
ゆかちゃんやみゆきちゃんやユリちゃん、ヒサミツ君たちに久々に会えると思うと嬉しい思いが強かったが、あけちゃんの悲しそうな顔を思い出すと、なんだか彼女にだけはもう二度と会いたくはなかったのだ。
みずきくんは帰宅後、本棚をじっと見つめ、昔読んだ本だったが、目についたタイトルの短編小説集を抜き取った。
それは、村上春樹の「パン屋再襲撃」だった。
みずきくんは、何故自分がこの本を抜き取ったのかの意味を、やがて知ることになる。
主人公の若い夫婦が、どうしてもう一度深夜にパン屋を襲わなければいけなかったのか?を理解した刹那、彼は同窓会に出席しようと思った。
そして、あけちゃんに仮に謝ることができなかったとしても、再会して笑顔で挨拶を交わせることができたら、それだけでもいいと思った。
自然体で、あけちゃんと向き合おうと思った。
人の人生には、やり残してしまったことがいくつかはあるものだ。
神様はそのやり残したことの始末をつける為に、ちゃんとその機会(チャンス)を作ってくれるものなのだ。
それが、きっと人生なのだろう、と思うみずきくんであった。