カード会社のコールセンターに勤めるジナ(コン・スンヨン)は、どんなクレームにも沈着冷静に対応できる優秀な職員だが、公私ともに孤高の生き方を貫いている。
同僚との会話はなく、昼食も一人、帰宅しても一人。
外出時はスマートフォンでひたすら動画を見続け、外界を遮断し、己の領域を守ることを怠らない。母の死後、唯一の肉親となった父親とも疎遠だ。
ところが研修生スジン(チョン・ダウン)の教育係を任された彼女は、指導どころか対話もおぼつかない。
さらに、アパートの隣人が人知れず孤独死していたことが分かり、ジナの生活は揺らぎ始める…。
一人で外食しているだけで周囲に不審の目を向けられるほど、孤独を許容しない韓国社会。しかし、近年はあえて孤独を貫く若者世代も増えつつあり、本作はそんな人々の生態を真摯に見つめた一作である。
これまでTVドラマを中心に活動してきた主演のコン・スンヨン(妹はTWICEのジョンヨン)、そして本作で長編監督デビューを飾ったホン・ソンウンは、ともに全州国際映画祭ほか国内外の映画賞を多数獲得。













ソロ活で出会った人とも職場内でも、自分のペースで関わるドラマ「ソロ活女子のススメ」の主人公の五月女めぐみと違って、外食中も通勤時間もスマホで動画を見続け、上司や同僚とも必要最小限にしか関わらず、自分を「孤高」という殻で守っているジナは一見観客の感情移入を拒むとっつきにくいヒロインのように思える。
だが、母親を裏切って浮気したり、遺言書を書き換えて母親の遺産を独り占めした父親、1人でランチ食べれない女子のスジンとの関わりの中で、自分の中にある「独り」が怖い自分自身や父親へのわだかまりと割り切れなさに気づいて、一歩を踏み出すまでのジナの葛藤や心境が、地味に見えるくらい繊細でリアルなタッチで描かれているけど、サイコホラーっぽいテイストもあり、異色なヒューマンドラマ映画の良作。
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