作家志望の青年ビル(ジェレミー・セオポルド)は、創作のヒントを得るために通りすがりの人々の後を尾けている。 

ある日、いつものようにある男を尾行していたら、男にばれてしまう。 

コッブ(アレックス・ハウ)と名乗るその男もまた、他人のアパートに不法侵入しては、私物を盗んだり私生活を覗き見る行為に取りつかれていた。 

「相手にとって大事なものを盗むことで、相手に大事なものを再認識させる」 

ビルは次第にコッブに感化され、行動を共にするように。 

数日後、ふたりで忍び込んだアパートで見た写真の女(ルーシー・ラッセル)に興味を惹かれたビルは、彼女の後を尾けはじめる……。 

クリストファー・ノーランが監督した長編デビュー作『フォロウィング』は、ロッテルダム映画祭をはじめ数多くの映画祭で賞を受賞し、ノーランの才能を一躍世界に知らしめた記念すべきデビュー作である。 

未来から過去へと時間軸を逆向きに映し出した『メメント』。 

アメコミ映画の新時代を切り開き、数々の伝説を打ち立てた『ダークナイト』シリーズ。<夢の中>を映像化し、観る者の度肝を抜いた『インセプション』。 

五次元の宇宙空間を創り上げた『インターステラー』。 

時間が逆行する世界を描き未知なる映像体験へ誘う『TENET テネット』。 

誰も観たことのない映像を0から生み出す才能で、常に新たな“体験”を放つノーラン。 

過去から未来、未来から過去へと交差する時間軸で紡がれる本作は、世界中で絶賛されたこれまでの作品以上に複雑な構成となっており、ノーランの魅力すべてが詰まった傑作である。伝説の、壮絶な、始まりを目撃せよ! 

本国公開25周年を迎えた2024年にノーランが日本での公開を熱望。 

本編はオリジナルの16mmエレメントを4Kスキャン。 

最新技術を駆使し、画面上の傷を除去して、解像度を上げた。これによりシャープで、ディティールまで美しい豊かな映像が実現。 

音響に関しては、新たに5.1サウンド・トラックを採用。 

ノーラン監修のもと力強い完成度と完璧な音量レベルとなった。現時点で世界最高のクオリティで帰ってくる。













 「他人に囲まれながら退屈で孤独」に耐えられず「他人へのつけまわし」を小説のネタ集めと退屈しのぎの為に始めた作家志望のビルのキャラクター造形など「ロンドンでの生活からこの作品を思いついた」というノーランのプライベートフィルムとしての面、「つけまわしはしても他人の家に入らない」という自分のルールを破って謎めいた女性に翻弄されるノーランが大好きなフィルムノワールへのオマージュ、作家志望だが一歩踏み出す勇気が足りないビルとスリルや金のために空き巣を続けるコップの「ダークナイト」などでのぶつかり合いながら奇妙な絆を結ぶ対照的なふたりの男の関係、のちに「インセプション」などでパージョンアップするリアリティのある「空き巣」のルーティンのディテール、ビルが受ける警察の事情聴取から始まり終わる円環構造、サスペンスを盛り上げるスリリングなカメラワークや劇伴造形、のちのクリストファー・ノーラン監督作品の作風の原型を知ることが出来るサスペンス映画。 

リマスター版は、より陰影の効いた映像やサスペンスを盛り上げるスリリングな音響効果が、素晴らしい。

「インセプション」レビュー


「ダークナイト」レビュー