テレグラムというメッセージアプリを使用したn番部屋には、少女たちの性的な映像が配信されており、数万円の入場料を払うことでより過激な映像を見ることができるしくみとなっていた。 

犯人たちは興味本位でわいせつな画像を投稿している少女に、警察と名乗ってコンタクトをとり、個人情報を聞き出して脅し、言うことをきかせる…という手口。

 フィッティングモデルの仕事を紹介すると称してテレグラムに誘導して、テストという名目で下着姿の写真などを送らせて、報酬を送る為という理由で銀行口座などの個人情報を握ると、もっと過激な写真などを送らせるよう脅迫する手口。 

ツィッターのDMで写真などの流出を警告したリンクに個人情報を抜き取るウィルスを仕込み送ってテレグラムに誘導し、猥褻な写真などを送るよう脅迫する手口など、様々な手口を使っていたのだ。 

主犯格「博士」をはじめとした加害者たちの暴挙は、言葉にできないものがある。 

一度餌食になってしまったら最後、彼らに「奴隷」と呼ばれて徹底的に痛めつけられる。 

これが、主に10代の女性を狙ったデジタル性犯罪事件で、2019年に韓国で発覚した「n番部屋事件」の概要。

 韓国で実際に起きた「n番部屋事件」と呼ばれる衝撃的なデジタル性犯罪を暴くために挑んでいくジャーナリストたち、2人の女子大生、警察官らに密着している犯罪ドキュメンタリー映画。 













『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』は、「n番部屋事件」を追ったハンギョレ新聞の記者と、n番部屋の存在に気づいて独自に調査していたメディア志望の大学生が経験を語る形式で、いかにリスクを抱えながらも正義を全うしたのかが描かれている。 

しかし、彼らの調査は決して格好良くスマートなものではなかった。 

まず、n番部屋の存在を記事にしたことで、ハンギョレ新聞の記者の家族を含む個人情報がリークされた。 

また、事実を大々的に報じれば、事態が大きく動き犯人逮捕につながると期待していたものの、新聞の一面を飾っても世間から見向きもされなかった。 

その状況を目の当たりにしたルームの住人たちは調子付き、「自分の部屋も宣伝してほしい」と記者らを挑発するメッセージを送ってきた。 

そして、記者の意に反して、報道で部屋の存在を知った人たちがルームに参加し、ますます盛り上がったのだ。 

テレビの情報番組が取り上げることになると、今度は「奴隷のひとりを自殺させる」と、具体的にどの女性が犠牲になるか発表し、プレッシャーをかけた。

 「博士」が、猥褻画像などの売買に暗号資産を使用したことから、逆に足がついた。 

結局、この報道が事態を大きく動かすこととなり、もっとも悪質な管理人のひとりとされる「博士」ことチョ・ジュピンは逮捕された。 

だが、n番部屋というチャットルームを作った管理人ガッガッの尻尾を掴むのは、サイバー捜査隊が総力を上げて捜索したが、ガッガッは廃棄されたスマホからフリーWi-Fiに接続していたため、なかなか特定するまで時間がかかったが、最終的にガッガッことムン・ヒョンウクを逮捕出来た。 

だけど、その為に「奴隷」の写真がテレグラムにアップされるという2次被害が起きたのは後味が悪いし、猥褻な写真などをアップさせられた被害者の写真や個人情報は完全に消すことは出来ない。 

こういうサイバー性犯罪を告発するにも被害者がリスクを負い通報しなければならないシステムを告発しやすいように改善したり、早くから怪しげなリンクにアクセスしないなどのネットリテラシーを教育する必要があることを痛感させられた犯罪ドキュメンタリー映画。

Netflixで、配信中。

https://bunshun.jp/articles/-/49385?page=1