毎日が晴天で毎日が夏、ピンクに彩られ、女性つまり全てのバービーがのびのびと暮らしすべてが完璧な夢のような世界“バービーランド”。

いつもハッピーでおしゃれが大好きな人気者のバービー(マーゴット・ロビー)は、ピュアなボーイフレンドのケン(ライアン・ゴズリング)や仲間たちに囲まれ人生最高の日々を送っていた。

そんなある日、バービーが「死んだらどうなるの?」と思った時、彼女の身体に異変が起こり始める。

空は飛べなくなり、シャワーからは冷たい水。バービーの代名詞である“バービー・フィート”(ハイヒールを履くようにかかとを上げた状態)も床にべったりというアンハッピーな事態に困惑するバービー。

やがて、世界の秘密を知る変わり者のバービー(ケイト・マッキノン)の導きで、ケンと共に人間世界へと旅立つことに。

完璧とは程遠い困難だらけの人間世界で、バービーは驚くべき世界の秘密を知るが……。 

それには、バービーランドと現実を干渉しないための壁に穴が空いてしまい、現実の女性たち特にマテル社でバービーの新作をデザインしたマテル社の受付グロリア(アメリカ・フェレーラ)の悩みや憂鬱がバービーランドのバービーに影響を与えて異変を起こしていたことが分かった。

女性たちをバービーにさせる夢を与えてきたバービーが、現実世界が女性差別が蔓延し女性活躍が進んでいないこと、特に自分たちバービーを生んだマテル社の社長や重役が男性ばかりであることに、ショックを受けた。

一方で、バービーランドでバービーの恋人というアイデンティティしか与えられていないケンは、現実の男性をお手本に男たちの楽園「ケンダム」を作ろうとする。

バービーは、果たしてバービーランドを守れるか?

世界中で愛されているファッションドール“バービー”の世界を「レディ・バード」のグレタ・ガーウィグ監督が実写化。



















女性たちの楽園「バービーランド」も、男たちの楽園「ケンダム」も、一方が権力を握るデストピア。

またフェミニズムと共に進化して女性のロールモデルになってきたバービーも、2000年代は「オシャレな服を着てモデルのような体型であることが、女性の理想であるかのようにルッキズムを助長した」という功罪も含めてバービーの歴史を絡めて描かれている。

バービーの新作のデザインを考える受付のグロリアはバービーに憧れバービーのようになりたいと仕事や家庭を頑張ってきたけどバービーの理想像に疲れていることやバービーが見せる理想像に反発するグロリアの娘サシャも含めた現実の女性の苦悩、現実男性をお手本にして家父長制に取り憑かれマッチョに振る舞うケンの痛さを通して筋肉や酒やスポーツに夢中でナルシズムやマンスプレイングに取り憑かれた男性の戯画化を、リアルにあるあるを含めて描かれているのが観ていてイテテとなりながらも、バービーやケンが選ぶ選択やグロリアが新たにデザインしたバービーの新作はミソジニーやミサンドリーを超えた「らしさを超えたありのままを讃える人間讃歌」を提示していて、フェミニズム映画と思い見ず嫌いしている人にこそ観て欲しいドラマ「男女逆転大奥」に並ぶジェンダーフリー・ファンタジーコメディ映画。

「可能性は、無限大よ」