北林三知子(板谷由夏)は、昼はアトリエで自作のアクセサリーを売り、夜は焼き鳥店に住み込みのパートとして働いていた。

しかしコロナ禍の影響で、突如仕事と住処を失うことに。

新しい仕事のあてもなく、ファミレスや漫画喫茶も閉まっており、途方に暮れる三知子。

暗闇の中、そこだけ街灯に照らされたバス停が目に留まる。

誰にも弱みを見せられず、バス停で寝泊まりするホームレスになった三知子は、ある時公園で元左翼過激派の闘士で古参のホームレス・バクダン(柄本明)と出会う。

一方、三知子がかつて働いていた焼き鳥店の店長・寺島千晴(大西礼芳)は、コロナ禍の中、現実と従業員との板挟みになる。

さらに恋人でもあるマネージャー・大河原聡(三浦貴大)のパワハラやセクハラにも悩まされながら、かつての店員の三知子や純子(片岡礼子)やジャパゆきさんのマリア(ルビー・モレノ)を救おうとする。 

 2020年11月に渋谷区幡ヶ谷のバス停で寝泊まりしていたホームレスの女性が突然襲われ死亡した事件をモチーフにし、コロナ禍が招いた貧困・社会的孤立を描いた社会派ドラマ映画。

















母親と不仲になり、焼き鳥屋で住み込みで働きながらアトリエを借り自作のアクセサリーを売る三知子が、パート先の焼き鳥屋の都合で一方的に突然解雇され退職金は表向き支払ったことにされ、パートの女性たちにかねてより反感を抱いている本社から出向してきたマネージャーの大河原に着服され、次の仕事先に採用された介護施設にはコロナ禍のため採用を取り消され、なんとか住み込みの仕事を探そうとするが、上手くいかずホームレスまで堕ちる。

本社からの出向で焼き鳥屋の社長のジュニアである大河原にセクハラされたり、経営方針などで逆らえなかった焼き鳥屋の支店の雇われ店長の千春が、パートの店員の三知子たちがちゃんと退職金を支払われず苦境に陥っているのを知り、大河原に逆らってでも三知子たちを救おうと奮闘する。

三知子と千春のストーリーを交錯しつつ、飲食店などのサービス業を的にして営業を自粛させたり営業努力などの自助を強いる政府やホームレスへの排除を煽る発言をするメンタリストDAIGOならぬKENGO(柄本佑)やKENGOに感化されホームレスなどの弱者を排除しようとするネトウヨなどのコロナ禍で弱者を排除する政治や思考が強まった日本のリアルを炙り出しつつ、三知子と千春たち差別や不正や排除が横行する日本で片寄せあって生きる女性たちのシスターフッドに救われるかもしれないほのかな希望を示すクライマックスの展開は、クェンティン・タランティーノが自作映画の劇中で歴史に踏み躙られた犠牲者を救ったように高橋伴明監督と脚本を担当した梶原阿貴が込めた願いが込められていて胸が熱くなりますが、実際の事件の非情さに、自己責任を押し付ける日本の政治に怒りが湧き上がる社会派ヒューマンサスペンスの問題作。

「わたし、一度くらいちゃんと逆らってみようと思います」