テキサス州の警官ジム・アルノー(ジム・カミングス)は、私生活では妻と別居し、仕事もトラブル続き。

親権争いの渦中にいる小学4年生の一人娘クリスタルとは、週3回しか会えない生活を送っていた。

そんな最中、ジムの母親が亡くなる。

葬儀で遺族代表としてスピーチを任されたジムだったが、うまく話すことができず、娘のピンクのラジカセで、母が好んだブルース・スプリングスティーンの『涙のサンダーロード』に合わせて踊ろうとする。

ところが、ラジカセの故障であえなく失敗。無音の中、涙ながらに踊り出すジム。

バレエ教室を主宰していた母に対する想いを込めた踊りだったが、親権をめぐる調停で、その映像が奇行の証拠として提出されてしまう。

この件で相棒の黒人警官ネイトに八つ当たりしたジムは、ついに警察を解雇される羽目に。そんなジムに訪れた涙の結末とは……。 

 「アブノーマル・ウォッチャー」に出演したジム・カミングスが、監督・脚本・編集・音楽・主演の五役を兼任している。2016年のサンダンス映画祭短編部門グランプリ受賞作を長編映画化。













ジム・カミングスは、この映画を知人が母親の葬式で歌を歌ったことから、着想したという。

同僚や周りから好かれてるが、正しくありたい誠実でありたい気持ちが走り過ぎてつい暴言したり相手に自分の正しさを押しつける不器用さがあるジムが、自分の母親の葬式でブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」に合わせて追悼のダンスを踊るはずが上手くいかなかったことを手始めに、前妻との泥沼化する娘の監護権裁判や通報を受けた不審者を上手く処理出来なかったり警察官の仕事も上手くいかず追い詰められながらも、希望を模索する七転八倒の日々を、「正しく真っ当な家庭人でありたいアメリカ特有のマチズモに縛られている男の足掻き」として描いているのが、「自由と未来を追い求めるアメリカ庶民の物語」を作り続けるブルース・スプリングスティーン的。

弱さや悩み事を上手く打ち明けられなかったジムが、親友ネイトや娘クリステルに自分の気持ちを不器用ながらも真っ直ぐぶつけるクライマックスの展開が胸熱なトラジコメディ悲喜劇映画。

「この街は負け犬だらけ。勝つためにここを出て行く」byブルース・スプリングスティーン「涙のサンダーロード」より