蒼山(中村倫也)は借金取りに追われ暴行を受けていたところ、黄色いツナギを着たヒゲ面の男に助けられる。男は蒼山をデュードと呼び、居場所を用意すると言う。
たどり着いた町は、ツナギを着たチューターたちに管理されていた。そこは、簡単な労働と引き換えに衣食住が保証され、セックスで快楽を貪る毎日を送ることもでき、出入りも自由だが決して離れることはできないという奇妙な町だった。
住民たちは何も知らされず、何も深く考えずにネットへの書き込みや別人を装っての選挙投票などの労働を受け入れている。
奇妙な町での時間が過ぎていく中、蒼山は行方不明になった妹ミドリ(立花恵理)をこの町に探しに来たという紅子(石橋静河)と出会う。
他の住人達とは異なり思い詰めた様子の彼女を蒼山は気にかけるが……。




いわゆる「ディストピア系サスペンス」だが、借金で首が回らない者やDV被害者でシェルターにも入れない者や前科が原因でなかなか更生出来ない者やネットカフェ難民で利用料金を滞納してる者などを、甘い言葉でまたは強制的に「人数の町」に連れてきて「SNSである人やものを褒めちぎり、あるいは否定しまくり世論操作をする」「なりすまし投票」などの作業をして対価として食糧か服をもらい住む場所を提供するという設定は、昨今の社会保障費削減を押し進める日本の状況から考えると荒唐無稽であると笑えないリアリティと怖さがある。
ただ、妹を探しに町にやって来た紅子が登場してからは、蒼山が紅子と心を通わせる心理などが唐突なように描写が不足しているので、ラストの蒼山の決断のほろ苦さが物足りない。
だが、SNSや世間の空気や世論に飲み込まれて「考えないでただ世論や空気に飲み込まれ多数派の人数に、組み込まれてしまい思考停止に陥らされる」日本を風刺したディストピア系サスペンスとしては楽しめるサスペンス映画。