埼玉県の農道を、1台のワンボックスカーがある家族を乗せて、東京に向かって走っている。カーラジオからは、さいたまんぞうの「なぜか埼玉」に続き、DJが語る埼玉にまつわる都市伝説が流れ始めるーー。 

 その昔、埼玉県民は東京都民からそれはそれはひどい迫害を受けていた。通行手形がないと東京に出入りすらできず、手形を持っていない者は見つかると強制送還されるため、埼玉県民は自分たちを解放してくれる救世主の出現を切に願っていた。 

 東京にある、超名門校・白鵬堂学院では、都知事の息子の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)が、埼玉県人を底辺とするヒエラルキーの頂点に、生徒会長として君臨していた。しかし、アメリカ帰りの転校生・麻実麗(GACKT)の出現により、百美の運命は大きく狂い始める。 

 麗は実は隠れ埼玉県人で、通行手形制度撤廃を目指して活動する埼玉解放戦線の主要メンバーだったのだ。その正体がばれて追われる身となった麗に、百美は地位も未来も投げ捨ててついていく。 

 2人の逃避行に立ちはだかるのは、埼玉の永遠のライバル・千葉解放戦線のリーダーであり、壇ノ浦家に仕える執事の阿久津翔(伊勢谷友介)だった。東京を巡る埼玉vs千葉の大抗争が群馬や神奈川、栃木、茨城も巻き込んでいくなか、伝説の埼玉県人・埼玉デューク(京本政樹)に助けられながら、百美と麗は東京に立ち向かう。果たして埼玉の、さらには関東の、いや日本の未来はどうなるのか――!?

埼玉ディスを題材にした笑撃的な内容で話題となった「翔んで、埼玉!」のまさかの映画化。

「埼玉には海がないのに、田んぼばかりで何にもない」などの埼玉ディスばかりでなく、群馬県がサファリパークのように描かれていたり、地方の地元ネタや東京の地方を見下している特権意識や東京に媚びている神奈川県までネタにしているローカルギャグを題材に、「他県に対するディスは郷土愛やライバル意識の裏返し。だから地方は東京に負けないように団結しよう」という地方復興のメッセージを込めているのかも。

なんて難しいことは考えず、瓶に詰めた空気がどこの空気かテイスティングする「東京テイスティング」や流山での埼玉解放戦線vs千葉解放戦線の初戦「出身有名人対決」などローカルネタを奇想天外に風刺する描写、原作に忠実に再現された無駄にゴージャスなキャラクター描写、原作に忠実な二階堂ふみやGACKTや伊勢谷友介の振り切ったやり過ぎ演技を大笑いしながら楽しめるローカルコメディ映画。エンディングに流れるはなわの主題歌まで大爆笑。