日常的に続く夫の暴力。そんな日々に耐えかねた江崎草子は、自分に片想いしている友人の大高智代美に夫を殺すよう持ちかける。想い人からの頼みを断りきれず、智代美は草子の夫を殺す。
草子は、智代美と共に逃避行を始める。
逃避行の中で、次第に露になる血縁への執着とお互いへの無理解。
死か逃亡か心中か警察への自首か、どんづまりの選択肢を前に立ち尽くすふたりに、光は刺すのか?
連載開始時、弱冠22歳であった中村珍が、骨身を削り血を流して女たちのさまよえる魂の道行きと咆哮を描いた傑作ヒューマンドラマ漫画。

何かを蹴りつけるように走る草子が智代美は好きだった。そんな彼女が陸上部を辞めなければならなくなり奨学金を打ち切られた弱味につけこんだ彼女は、5年後借金を払えないなら自分のものになれと迫る。
彼女を自分のものにしたいがための頼みのせいで草子が暴力夫と結婚しなければならなくなったことへの智代美の草子に対しての罪悪感、草子が自分のものにならないことへの智代美の怒りと絶望、運もなにもかも使い果たしたのに父親や夫に殴られるだけの人生だった草子の絶望、智代美の人生を狂わせた草子の罪悪感、頼れる家族がいる智代美と家族に恵まれない草子の理解し難い溝、殺人犯の智代美には自分しかいないと思い込む草子の傲慢と甘え、その果てに自分のために全てを容易く捨てられる智代美のために生きて自首しようとする草子の決意、孤独な草子のために全てを捨てて隣にいようとする智代美の決意。

作者がこの漫画を描く時に聴いていた音楽、中島みゆき「二艘の舟」「愛だけを残せ」「瞬きもせず」「たかが愛」「糸」など、アンジェラ・アキ「愛のうた」、RADWIMPS「ふたりごと」、山崎まさよし「僕はここにいる」などの音楽を聴きながら読むとよりキャラクターの心情が理解出来ます。

「恋愛は不自由だよ」

映画版は、4月15日からNetflixで配信。