What a fucking world!!と叫びたい夜
そこには、25メートルのプールがあって、温水が張ってあり
僕はただ、そこを行ったり戻ったりしているだけだ。
水の抵抗を体に感じながら、ただただ前に進もうとするだけだ。
水中を見ると、残り5メートルのラインが見えた。
タッチを合わせにキックを強くした。
クロールで息継ぎをすると、太陽の光が眩しく高層ビルが目に入った。
ふと、ここがどこだかわからなくなった。
現実的な太陽の光と、現実的高層ビルなはずなのに、非現実的なプールにいる僕は
日常を忘れさせてくれる空間の中で、自分が何者かさえわからなくなった。
タッチを合わせゴールして僕に、Tが「今、875?」と聞いてきた。
僕は、「そう。あと125」と答えた。
──そうだ。ここは現実的な社会だ、と自分に言い聞かせ心臓に手を当てた。
とても、鼓動が早かった。現実的速度を上回る鼓動。負荷がかかった体。
*
現実的な社会は、実にやりがいのあるものを僕に提供してくれる。
こんなに愛している女が他の男と結婚したり、仕事だったり、減量だったりと
僕が退屈をしないように、様々なものを提供してくれる。
実にありがたい。退屈はしない。
だけど、退屈なんてしないから、少しだけ平穏をくれ、と願う。
それでも、やっぱり、やりがいのあるハードルをとことん提供してくる。
だから、どうしようもなく面白いし、どうしようもなくやるせなくなる。
誰かに必要とされて、誰かが見守ってくれていればそうではないんだろうけど
僕は、誰にも必要とされてはいないし、誰も見守ってはくれていない。
ふと、捨ててきた人たちのことを考えた。
彼らは僕を救ってくれたのだろうか、と考えた。
答えはもちろんノーだった。みんな、同じだ。
吐きたくなった愚痴とか、誰にも言えない悩みを僕に言って、それに対して
もっともらしいことを、もっともらしく伝える。
彼らの誰にも言えない辛さを、僕が、この性格とキャラクターで受け入れる。
僕の中にある、やるせない思いや孤独はどうすればいいんだろう。
誰にも言えない思いは、これまでどうやって処理してきたんだろう。
これからどうやって処理すればいいんだろう。
彼女は3年後だって振り向いてはくれない。
一生支えられる、支えて欲しいパートナーを見つけたのに、彼女は他の男のもの。
彼女との平穏な生活。それすら叶わない。
彼女は僕ではない人の意見により揺さぶられ、僕との将来を純粋に見れない。
僕が彼女に伝えた言葉たちは、いつも宇宙の果てに飛んでいく。
誰も癒してはくれない僕の心は、どうすればいい。
誰にも気づかれる事もなく降り続ける、海の上を降る雨だけが知ってくれるのか。
大西洋のど真ん中の海を想像しながら、ウィスキーを飲んだ。
夢くらいは、少しは優しい世界を見せてくれるだろう、と思い、寝よう、と思った。
* * *
君の隣で眠れたらどれだけ幸せなことだろうと思う。
現実でも、おれは君に癒され、夢でも多少は現実から逃れることが出来る。
夜中に夢から覚めて、隣を見ると君が寝ている。
それだけで、おれは本当に安らぐよ。
*
でもこれは、こちら側から見た世界であって、彼女にとってそう願うのは
僕じゃない男だと考えるとやるせない。
What a fucking world!
夢も希望もない。