僕が酒を飲むこと、彼女が思うことについて
今、彼女の声が聞きたくて、彼女に僕はこうなんだよ、と言いたい。
今すぐに、どうしようもなく言いたい。
彼女に自分のありったけの想いと、将来の青写真について話したい。
語り合うというよりも、一方的に”こうなんだよ”とか”こうなれたらいいね”って話したい。
*
今まで僕と付き合った彼女たちは、必ずと言っていいほど僕にこう言った。
「酒に酔ってるあなたが一番いい」と。
伝え方はそれぞれあったけれど、高校生のときの彼女も、前の彼女も例外なくみんなそう言った。
なんで?と聞くと、酔ってる時の方が素直だからいいんだよ、と彼女たちは言った。
へぇ、言ったり、思ったりした。
それは、いつも素直じゃない自分を認めるという訳ではなく、単に自分に感心したからだ。
僕は、表情に感情が出やすいタイプだし
むしろ人より素直と受け取られても、おかしくないタイプだ。
でも、表情に、言葉に、自分の全てを晒すことは、絶対にしなかった。
彼女たちに自分の想ってること全てを話してしまうと、全てが終わる、と判断していたから
少なからず、自分自信に殻をして自分を隠していた。
殻を破って、かつ、彼女たちに全てを話さない、ギリギリのところで話を止めるのが
酒に酔った自分だ。
だから、彼女たちは酒に酔った自分が好きなんだろう。
酔いが覚めるように、そういった僕も消えていく。
彼女たちは、また酒を飲まないの?とたずねてくる。
実に、くだらない。
*
彼女には酔ってない運転中から僕の全てを話した。
今、酔っている僕が彼女に話したいことは、僕が綿密に想像する未来だったり
それに向かって一緒に歩こうね、という、そのプロセスだったりだ。
──たとえ、2人の間に青い薔薇しかなかったとしても──
もう、全て話してしまったし、今自分が酒に酔って話すのは、ひょっとしたら
普段、絶対に、誰にも語らない本当の自分なのかもしれない。
そんな風にできる相手と出会えたこと自体、僕は幸せなんだろうな思ったりもする。
──たとえ、青い薔薇であっても──
*
彼女は僕が酒飲みであることを嫌う。
けれど、僕は酔ったら、彼女相手だったら世界一素敵な未来の語りべになれる。
僕から語られる未来は、心の奥底からの願いであり、僕の全てでもある。
それは、今の僕たちなら、3年後の未来についてだし、もし一緒になれたなら
子供が出来たときについてだし、子供ができたなら、子供と僕たちの将来についてだし・・・・
僕は、彼女と一緒に過ごせたら、現実的理想を限りなく話せると思う。
今日、彼女はとても可愛かった、というよりも美しかった。
黒のタートルにオレンジのスカートがとても彼女の体に似合っていた。
フロアに入り、彼女に目をやると彼女が背筋を伸ばし、柔らかな笑顔でキーボードを叩いていた。
そのメールはたぶん僕に送られるもので、
僕はPCにログインして彼女からのメールをすぐにチェックした。
やっぱり彼女は僕にメールを送ってくれていた。
彼女に、僕が考える未来について話したくなった。
少し前、仕事中彼女とメールをしていて、僕が彼女にメールを送った後に
プリントアウトした紙を取に行くふりをして、彼女を見ていたことがあった。
彼女は、とても素敵な柔らかな笑顔をしながら、PCのモニタに向かっていた。
世の中の全ての罪が許されるような、その素敵な笑顔を、プリンタの前から何気なく見た僕は
少し彼女に見とれた後、少し早歩きで席に戻った。
彼女からのメールには、”好きだよ”と書いてあった。
僕は、彼女のことを好きになっていたけど、まだ想いを伝えていなかったときだった。
あの時、彼女を、より一層好きになった。
* * *
素敵な未来だけでなく、素敵な過去まで、僕は話せるんだ。
それは、想像力と記憶力があるからじゃなくて、君を深く想っているからなんだと思う。
酒を飲む男は嫌いかもしれない。
過去の傷が癒えてないかもしれない。
でも、僕が酔ったときは、幸せな世界を見せてあげれるんだ。
いつだって。
絶対に君を傷つけたりはしない。
酒を飲むことは、殆どの場合、自分を解放する手段でしかないんだ。