死・文明の終わりについて | 彼女が結婚したとしても

死・文明の終わりについて

あらゆるモノは自然的に死んでいく。
草も、花も、虫も、鳥も、人も必ず死んでいく。

そして今日、僕のとても大きな想いも殺された。
自然的ではないようだが、これはきっとごく自然的で一般的な死なんだろう。

 * 

『完璧な文章はない。完璧な絶望がないように』と言った作家がいた。
確かにそうなのかもしれない。

彼女はおれを好きだと、心の中で言ってくれた、ようにおれは受け取った。
これは絶望の中のほんの僅かな一筋の光の筋、の、断片の、幻覚か?

自然的死が存在する以上、完全な絶望ではないということなのかい?作家さん。
それでも、これほど愛していても報われないものなのかい?作家さん。
作家さん、無責任過ぎるよ。

わずかなビールとウィスキーが多く入れば、おれはこう言うね。
「完璧な絶望は存在するよ。おれはそれを経験したことがあるんだ」

 * 

おれは今日泣いた。
大粒の涙が頬を流れ続け、鼻水が止まらなかった。
その涙は、雨のドライブを思えば、なお止まらないし(そしてまた電話をした)
彼女を考えれば、より強く流れた。

どうやって諦めればいい?
どうすれば忘れられる?
瀕死のおれをいくら撃ち抜いてもおれは諦められないし、忘れられないんだ。
と、声がない彼女に伝えた。

これがまさに完璧な絶望なんだな、と考えた。
"死"そのものが絶望的なのではない。伝達方法が失われること。


『文明とは伝達である』と誰かが言った。
ひとつの文明が失われた。

文明が死んだ都市の復活はない。
歴史が証明している。
エジプト、インダス、メソポタミア、黄河。奈良、京都、鎌倉…、切りがない。
失われた、死んだ文明都市たち。遺産しかない街たち。

今日、ひとつの文明が失われた。
復活なき、失われた文明。
遺産という名の"思い出"しかない時間的空間。

──それでも今も、おれはマキをとても愛している。

だから、今夜はシーヴァスを飲み続けよう。
そうでもしないと。

なぁ、

なぁ、マキ。

なぁ、君ならわかってくれるだろう?