光を探した旅と傍らにある暗闇について
彼女をフィアンセと同棲する家の近くまで送り届けて、三度キスをした。
それは、その前にしていたものとは違って情熱的の正反対にあるものだった。
そんな絶望的な挨拶的キスを交わし、別れた。
交差点を左折してすぐ車を停めた。
今日という時間を取り戻すために電話をした。
話中だった。
夜は二度と明けないのではないかと思うような僕の暗闇を目の前を覆った。
もう一度かけてみると予想に反して彼女の声が聞けた。
彼女に今日は家に来ないか、と誘って、断られた。
気が狂いそうになる空気に耐え切れず彼女は電話を切った。
彼女と1日聞いていた3枚のCDは一人で聞けずFMに切り替えた。
くだらないDJがくだらない曲をかけ、くだらないトークを延々と繰り広げた。
そのくだらなさは、あらゆるリスナーに刺さるものだった。
例外なく、そのくだらなさが僕に冷静を取り戻させた。
僕は笑った。一人で環7を走りながら笑った。笑ってみることにした。
首都高を走りながら今日という一日を時系列に沿ってなるべく正確に思い出してみた。
三軒茶屋から3号渋谷線で谷町ジャンクションまでは
午前中に雨の中を東名高速でサンドウィッチを食べながら走ったことを。
そのときに話したこと、そのときの彼女のことを。
東京インターまでの渋滞でキスをしたことを思い出した。
谷町ジャンクションから都心環状線に入り工事で少し渋滞した。
沼津インターを降りて、修善寺に行ったことを、散策したことを思い出した。
彼女の横顔、その会話について。そこでのキスを思い出した。
一碧湖までの山道を丁寧にハンドルとアクセルを操作しながら
山道を登ったり下ったりしたことや
その時にかかっていた曲たちと、彼女が僕に言ってくれたことを思い出した。
熱海の荒れた海とたくさんのサーファーを思い出した。
彼女が左を向いていることを、自分が話したことを思い出した。
西湘ラインに乗らずに入った道で彼女を抱きしめたことを思い出した。
彼女のほっそりとした魅力的な体を思い出した。
5号池袋線では飛ばした。東京での彼女について考えたからだ。
トイザラスでの彼女は相変わらずとても僕を魅了したけれど
フィアンセがいることを確認させられたことについて思い出してしまった。
僕は今にも大粒の涙が出そうだったことについて思い出した。
東京タワーでクリスマスツリーを見ながら僕がしたいキスをしたことと
そのとき彼女は僕のキスに感じていたことを思い出した。
公園の近くの路肩に車を停めて話したり、キスすたり、抱きしめあったこと、
彼女の体が僕を求めていたことを、僕にもその準備ができていたけれど
彼女は僕にすべてを委ねなかったことを思い出した。
彼女が「好き」と言ってくれたことと、僕は感情を抑えられずに涙したことを思い出した。
* * *
僕はこの旅行で彼女との将来についての光を探したかった。
でもそこには常に、傍らに、しかもすぐ隣に暗闇があった。
暗闇は暗い東京でよりその暗さを増し、彼女は結論を譲らなかった。
一方僕は、彼女を愛していることに気づいた。
*
一日中彼女は、魅力的なその目で僕を見たり、見なかったりしたことを思い出した。