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引き続き、記事の整理をしております。
2019年10月6日の記事を再掲載いたします。
お楽しみいただけましたら幸いでございます。
【以下、2019年10月6日の記事でございます】
ARSNOVAの店内奥の正面に飾ってある『 ピチャヴァイ Pichhwai 』
ピチャヴァイとは、クリシュナ様(ヒンドゥー教の神様)の信仰が盛んだった
北インドにて寺院のご本尊の後ろの掛け布として使われていたインド更紗の一種です。
2006年の早春に私はこのピチャヴァイと出会いました。
長くお付き合いを頂いておりますお客様の中には
このピチャヴァイに愛着をお持ち頂いております方々もいらっしゃいます。
このピチャヴァイとの出会いはとてもドラマティックでした。
骨董店のウェブサイトにとても小さく掲載されていたものを見つけ、
私は小さな細密画だと思って問合せの電話を致しました。
ご覧いただけますとのことでしたので、早速お店にお伺いいたしました。
拝見致しますと私が思っていた大きさよりも遙かに大きく、
紙に描かれた絵だと思っておりましたが、布に描かれた絵だったのです。
一寸戸惑いましたが、とても良いものであると感じ、
思ったより求めやすい価格だったこともあり、即座に購入を決めました。
絵の中の女性が身に着けているジュエリーが
その頃扱っていたインド藩王家伝来のジュエリーにそっくりで
非常に良い資料になるだろうとも思いまた。
私が店主と商談をしております時に偶々お客様として居合わせたご婦人がいらっしゃいまして、こちらの様子をじっとご覧になっていらっしゃいました。
店主がお茶を淹れる為に奥の部屋に退きますと、ご婦人が私に向かって
「貴方はいつからムガールの布を集めているの?」とお聞きになられました。
「ムガール時代の布を購入するのは初めてです。」と答えますと大変驚かれて、
「貴方、ムガールの布は最後に辿り着くものよ…布の芸術としてはムガールは最高なの。
それにしてもこのような品を持っていることを
店主は何故私に伝えてくださらなかったのかしら?」と仰られました。
ご婦人は言葉を交わし合っていくうちに
「このピチャヴァイの修復を私に任せて下さらないかしら? 私、美術館に勤めているの。」
と仰られました。どちらの美術館にお勤めなのてすか、とお伺いいたしますと
「メトロポリタンミュージアムです。
メトロポリタンでもこれほどのピチャヴァイは見なかった。
ヴィクトリアン&アルバートミュージアムには似たものがあるわね。
でもそちらは損傷が激しいの。
東京国立博物館の品を修復している方々にお願いするのでご安心してくださいね。」
その様に仰られました。
その後にその方がテキスタイルの世界では非常に有名な梶谷宣子先生だと知ることになり、
何というご縁なのだろう…とひたすら驚いたことを覚えております。
梶谷先生はメトロポリタンミュージアムで37年お勤めになられ、
初代の染織品保全部長をおつとめになられた方です。
このピチャヴァイは修復に最もふさわしい方を伴って私の目の前に現れてくれたのですね…
申し分のない修復をして頂き、美しく額装をして頂いたピチャヴァイは
2006年以来ARSNOVAの仕事を見守り続けてくれております。
インドの宗教と申しますと、異国の宗教、日本人とは関係のない宗教と
思われる方が多いと思います。
日本に密教の教えをもたらした方は空海さんです。
空海さんは嵯峨天皇と信頼関係を篤く築かれ、
密教を日本に深く根付かせるという壮大なお仕事をなさりました。
密教の中で秘中の秘といわれる儀式が「灌頂」です。
嵯峨天皇は国家の安全、繁栄を密教の灌頂に頼られ、宮中に灌頂を受ける場が造られます。
その後天皇陛下のご即位の際に即位灌頂という儀式が行われるようになっていくのです。
即位灌頂は孝明天皇の代まで続き、
神仏習合への批判の高まりがあり明治天皇以降は行われなくなりました。
密教の灌頂の儀式は古代インドの国王即位や立太子の儀式が元になっています。
お釈迦様がインドの王子様であったことに関係するのかも知れません。
私はインドの藩王即位の儀式に出席したことがあります。
荘厳な儀式に圧倒される思いが致しました。
儀式の様式が密教の灌頂の元であるということには深く納得致します。
古の方々が私達の想像以上にダイナミックに動き、交流をなさり、
文化が混ざり合っていく様には深い感動を覚えます。
インドの宗教や文化は日本の私たちの暮らしに密接な繋がりがあることに度々気づきます。
ピチャヴァイの話から少し逸れましたが…
17世紀後期から18世紀初期に描かれたと思われる
ARSNOVAのピチャヴァイ、ご来店頂いた際はごゆっくりと
眺めて頂けましたら幸いでございます。
ピチャヴァイに纏わる過去のブログの記事はこちらからご覧いただけます。
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【以上、2019年10月の記事でございました】
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