Aさんとレストランに入った時には、「電車の時間があるので、あと1時間ほど」という話だったが、結局、気が付けば終電近くまで2時間以上も話を続けていた。
そして帰りの駅へ向かう途中も、話は途切れることはなかった。
その駅までの道のりが、もう少し遠ければ・・・どれだけ祈ったことだろう。
夢のような時間は瞬く間に過ぎ、そして一日が終わりを告げた。
昨日も書いたように、その日の時点で僕の気持ちは強く固まっていた。
この恋愛に、全てを掛ける。
この恋を、最後の恋にするんだ、と。
翌日になっても、その日の興奮が冷めやらずなにやら浮かれた気持ちのまま仕事をしていたのを覚えている。
前日の記憶に浸りながら、次のデートプランはどうしようかなどと考えていた、その夜。
帰宅した後、何気なく携帯を手に取った時、突然着信を知らせるランプが灯った。
電話の相手は・・・なんとAさんだ!
慌てて通話のボタンを押す。
普段は帰宅後にはマナーモードに切り替えるので、着信に気が付かない場合も多かった。
しかし、この日は偶然にも、彼女から掛かってきた電話に運良く気づくことができた。
こんな偶然も、なんとなく運命を感じるようで嬉しい。
その電話の内容だが・・・
元彼から電話が掛かって来て、ヨリを戻すために、もう一度話をしたいから会えないかと言われたらしい。
それで、精神的に不安定な状態にあったAは混乱してしまい、どうしてイイか分からなくなって思わず僕に電話を掛けてしまった。
という事だった。
事情はどうであれ、混乱していたとはいえ、そんな時の相談相手に僕を選んでくれたことは本当に嬉しかった。
もちろん、彼女が彼とヨリを戻すことなど、想像もしたくない。
だから「会いに行く必要なんてない!」と強く言いたい気持ちはヤマヤマだったが、頭ごなしに否定することは更に彼女の混乱に拍車をかける恐れがあると思った僕は、一つ冷静になって言った。
「二人の問題だから、二人で決めるべき。
だから会って二人だけで話をして、二人で結論を出すのが筋だと思う。
だけど、情に流されてしまわないように、あくまでも冷静に、客観的に話をすることだけ忘れないで」。
それを聞いたAは安心した様子で、やや落ち着きを取り戻していた。
「ありがとうございました。冷静に、会って話をしてきます」。
そう言い残して、その場は電話を切った。
翌日、再びAからメールが届く。
「昨日は突然の電話だったのに、親身になって聴いてくれてありがとうございました。
彼とは、正式に別れるという結論で落ち着きました。」
これを見て、僕も本当に安心した。
芯の強さを持った彼女のことだから、その場の気持ちに絆されてヨリを戻すなんて事はないと思っていたが、やはり連絡を受けるまでは不安で・・・。
だがこれで、やっと僕もちゃんと彼女を恋愛対象として正々堂々とハッキリ位置づけることができる。
そう思った僕は、晴れ晴れとした気分になった。
そして、今この今日に至る。
こんな気持ちは、本当に久しぶりだ。
彼女を想うだけで、胸が締め付けられるようで切なくなって、同時に暖かい気持ちで満たしてくれる。
恋をしているんだ。
それを、つくづく実感する。
もちろん、まだスタートラインに立っただけで何も始まってはいない。
僕一人だけ盛り上がって気持ちばかりが急いて焦り、そして勇み足を踏んでしまうような過ちは、これまでにもいくつかあった。
だから、同じミスは繰り返さない。
冷静に、静かに、それでいて熱く気持ちを想いを燃やす。
そんな状態で、今はいられればイイ。
そしていつかこの想いを彼女に伝えるその日まで。
この気持ちを大事に大事に、暖めて育てていこう。
きっときっと、彼女のハートを掴んでみせる。
そしてこれが、僕にとって最後の恋となりますように。