彼の声 2024.4.8 「ケインズの誤り?」 | 彼の声

彼の声 2024.4.8 「ケインズの誤り?」

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 経済学者のケインズは死ぬまで自身が敵視
して批判していたナチスドイツやスターリン
のソ連が不況時に政府が大規模な公共投資を
行なう典型例として有名なニューディール政
策に倣った経済運営をやっていたことを理解
していなかったようだが、ウィキペディアを
読む限りはそう思われるのだが、ウィキペデ
ィアのケインズに関する記述自体が反共的な
内容でマルクスやマルクス主義批判一辺倒に
偏向しているような感じだから、今ひとつ信
用できないが、政府による国家統治の面から
言えることは、自由主義や新自由主義の方面
から言われるケインズ批判として典型的なも
のとしては、社会主義こそがケインズ経済学
に倣った国家統治であり、実際に欧米のリベ
ラル的な左翼政権はケインズ式の手厚い福祉
政策を行なってきたはずだが、それが政治的
にも経済的にも行き詰まってきたから、20
世紀後半にケインズ主義に批判的な立場の新
自由主義が急に持ち出されてきて、一時的に
流行ってもてはやされたのだろうが、それも
また行き詰まってきたから、今度は左翼リベ
ラルー社会主義ーケインズ経済学の結びつき
からケインズだけを分離してきて再利用しよ
うと保守派が画策しているようなのだが、結
局マルクス主義だろうがケインズ主義だろう
が新自由主義だろうが、国家統治が問題とな
ってくるわけで、自分たちの国家統治が行き
詰まってきたことの目眩しとして何かその場
の政治情勢や経済情勢に照らし合わせて、そ
れに対応するのにもっともらしく思われる〇
〇経済学の類いを持ち出してきても、それが
目眩しの効果以上の効果を上げればそれなり
にうまく行ったことになるのだろうが、国家
統治そのものは〇〇経済学の類いとは無関係
というわけでもないのだろうが、政府が経済
的な行き詰まりを打開するために強引に強権
的な措置を行なうための口実として、〇〇経
済学の類いが持ち出されてくると見ておけば
いいのかどうかは、歴史的な経緯からそう感
じられることなのかも知れないが、それに関
してフーコーによればマルクス主義には国家
統治の理論が欠けていて、だからドイツの社
民党政権の時には新自由主義的社会主義が実
践されていたり、イギリスの労働党政権の時
にはケインズ主義的社会主義が実践されてい
たようだが、そうだとすれば今後日本でれい
わ新選組の政権が実現するかどうかは、その
時になってみないことにはどうなるかわから
ないだろうが、れいわの支持者によるとれい
わこそが真の保守だそうだから、またグリー
ン・ニューディール政策を掲げているわけだ
からケインズ主義的保守主義ということにな
るのかも知れないが、それの正反対の状態を
想像するなら、例えばイギリスのサッチャー
政権を新自由主義的保守主義と形容すればし
っくりくるかも知れないが、そういうのは中
身のない言葉遊びに過ぎないとしても、歴史
的に見れば第一次世界大戦から世界大恐慌を
経て第二次世界大戦へと続く動乱の時代の中
で、優勢となっていた国家の統治形態として、
経済の国家統制の時期が長く続いていて、そ
の統制経済をケインズ経済学に結びつけて批
判していたのがドイツやオーストリアの新自
由主義系の経済学者たちなのだろうが、国家
の状態が戦争や経済恐慌などによって非常事
態となっているわけだから、経済の国家統制
をやる成り行きになるのだろうし、それ以前
にドイツならビスマルクによって国家社会主
義が押し進められていて、またその数十年後
にはヒトラーによっても国民社会主義が押し
進められていたわけだから、果たしてそれら
をケインズ経済学が肯定していたのかという
と、ビスマルクの国家社会主義は時代的には
ケインズ以前だったし、ヒトラーやナチスド
イツは当のケインズ自身が批判していたのだ
ろうから、学校の教科書的な常識からすれば
何の関係もないと見なされても不思議ではな
いが、そこにルーズベルトのニューディール
政策やスターリンのソ連が絡んでくると、何
やら当時の流行現象として経済の国家統制と
共に国家統治の危機が顕在化していて、資本
主義経済の行き詰まりを打開するための方策
として、社会主義や共産主義には行かせない
ために、資本主義経済を維持しながらそこか
ら生じてくる弊害を改善するために考案され
たのが、ケインズ式の統制経済だと考えても
良さそうだが、果たしてそれを新自由主義者
が言うようにケインズ式と呼んでもいいのか
どうかがよくわからないのだが、要するに戦
争や経済恐慌となったから否応なく政府が国
家経済を完全に管理するようなことになった
だけで、ケインズ以前にもビスマルクによる
国家社会主義的な国家統制があったわけだか
ら、それをケインズのせいにするというのも
ちょっと言いがかりの感を否めないにしても、
新自由主義の学者たちにしてみればケインズ
経済学を格好の仮想敵のように見立てると、
その当時の時代状況にちょうどピッタリと合
致していたのかも知れず、ケインズにしてみ
れば迷惑な話だろうが、彼らにしてみれば同
時代的な成り行きとして、ビスマルクの再来
のような存在としてヒトラーが現れたわけで、
まさに自分たちの敵対勢力による天下になり
つつあったのだから、反体制的な昂揚感も盛
り上がってきたのだろうし、しかも現実に殺
されたり亡命を余儀なくされた経済学者もい
たわけだから、命懸けで経済学に取り組むよ
うな成り行きにもなってきて、そんな危機的
なリアリティが当時の新自由主義には反映し
ているのかも知れないが、そんな経緯や事情
があってナチスドイツが崩壊した後、ドイツ
が東西に分割統治されて、西ドイツでは反ナ
チスの経済学者が国家統治の面で政治の表舞
台に立つ機会を得て、戦後復興の立役者のよ
うな役回りを担うことにもなったものだから、
ケインズ経済学に対抗する宗派として新自由
主義経済学も世間に認知されるようになった
のだろうが、ケインズ経済学にしても世界大
恐慌があったから、ルーズベルトがニューデ
ィール政策を行なうことによって一躍脚光を
浴びることになったわけだろうから、もちろ
んマルクス経済学という経済学があるかどう
かはよくわからないが、イギリスで産業革命
が起こって世界の覇権を握る事態となって、
そんな中でも当のイギリスの労働者が奴隷労
働のような悲惨な境遇に苦しんでいたから、
当時のイギリスに亡命してきたマルクスが『
資本論』の中で人々の悲惨な境遇を告発する
事態となったわけで、いずれも歴史的な時代
状況に対応してそういう成り行きが生じてく
ると見ておくのが無難なところであり、もち
ろん歴史状況を無視して〇〇経済学の類いを
現代の状況にそのまま当てはめるわけには行
かないわけだ。

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