彼の声 2023.2.6 「世界情勢と対立軸」 | 彼の声

彼の声 2023.2.6 「世界情勢と対立軸」

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 国家間の対立軸として、ロシアによるウク
ライナへの軍事侵攻や中国やイランなどの独
裁的な傾向の強い国の国内で行われている人
権弾圧や民主派の弾圧などに対して、それら
の国々との対立を強調する主張の中でよく使
われる表現として、民主主義国と専制主義国
との戦いという構図が、アメリカのバイデン
大統領をはじめとして、自国が民主主義陣営
に属していると思っている国の首脳の言説の
中で見受けられることが多いだろうが、戦う
といっても直接戦争するわけではなく、ロシ
アに軍事侵攻されているウクライナへは武器
を供与したり、他の専制主義的な傾向の強い
国々には経済制裁などを仕掛けることになる
のだろうが、そういったあからさまにはっき
りしている対立軸とは別に、経済面での覇権
争いがあり、その中で結果的に独裁体制や軍
事政権になってしまう国が、そうなる過程の
中で政府と企業との間で汚職や腐敗が蔓延し
ていたり、一握りの富裕層とその他大勢の貧
困層との間で貧富の格差が極端なまでに開い
ていたりと、民主主義が機能しなくなってい
ることが原因でそうなってしまうことが多い
わけだから、その種の経済格差がそのまま国
家間の経済格差となって、経済が貧しい国で
は独裁体制や軍事政権となり、経済が豊かな
国では民主主義的な体制が維持されるような
成り行きとなり、唯一の例外が中国だと言え
るだろうが、中国でも貧しい農村部と豊かな
都市部との間で経済格差が極端に開いている
実態があるから、他の独裁的な傾向の強い諸
国とは人口や経済規模が違うだけで、そうい
う面を考慮に入れるなら典型的な独裁体制に
当てはまりそうだが、中国で試みられている
のは経済の面で豊かになっても共産党による
独裁政権を維持できるかということになりそ
うで、果たして非民主的な政治体制でも経済
的に豊かな社会を築けるかということなるだ
ろうが、それに関しては中東地域の王権国家
や首長国でも、一見すると経済的な豊かさを
誇示しているように見えるだろうが、それが
豊富なオイルマネーや外国人労働者の人権無
視の過酷で奴隷的な労働力に支えられていた
りするから、誰もが豊かさを享受できるよう
な体制ではなく、他の専制主義国と同じく貧
富の格差が甚だしいのだが、そういう意味で
は日本でも同じ政権政党がこの先何十年も変
わらないと、持てる者と持たざる者との間で
次第に経済格差が広がっていく傾向が顕著に
なってしまうのかも知れないが、なぜそうな
ってしまうのかというと、簡単に言うなら政
府と癒着して富を享受できる階層が次第に限
られてきて、一握りの富める階層が他の貧し
い階層のことを考慮しなくても済んでしまう
ような体制が定着していくからだろうが、要
するに貧しい階層の要望が政治の場に届かな
くなってしまい、貧困層を無視しても構わな
いような事態となってしまうのだろうが、現
状ではまだそこまで行っていないとしても、
果たして経済と政治がそんなふうに直接連動
するのかどうか疑問に思うかも知れないが、
たぶん民主主義を維持するには逆に経済と政
治を直接には連動させないような配慮が必要
なのかも知れず、政治や行政の場に経済的な
利権が絡んでくると、利益目当てで群がって
くる勢力が出てくるわけで、そうならないよ
うにするにはどうすればいいかと言えば、政
治や行政に関して情報公開を厳密に行なって
透明性を確保するしかなく、簡単には汚職を
できないような体制にしていくしかないのだ
ろうが、また経済政策自体が特定の業界や業
者に有利になるような政策は極力控えて、や
るにしても間接的なやり方に終始する必要が
あり、企業や業界団体に直接補助金を支給す
るようなやり方はやめて、消費者が商品を買
いやすくなるような政策が求められるのだろ
うが、そうなると減税や家計の負担を減らす
ようなことをやらなければならないのだろう
が、要するに公共料金や教育費や医療費など
を安くすることによって、安くなった分で他
の商品を買える余裕が生じてくるわけだが、
商品を買えたとしてもその商品が外国から輸
入した商品の比率が高いと、国内の産業が空
洞化している証拠となるかも知れないが、必
ずしも製造業だけが産業を牽引するわけでは
なく、非製造業などのサービス業などの分野
で国内の産業を育成していくことも可能性の
選択肢としてはアリだろうが、果たしてそう
いう産業を育成することが政治や行政に求め
られているかというと、必ずしもそういうわ
けでもないのかも知れず、成長分野の産業を
政治力や行政力などによって直接生じさせよ
うとすると失敗するのであり、それよりは社
会の中から自由な発想を駆使して活躍できる
人材を生み出さなければならず、そういう意
味では学術や文化などの方面で自由度を高め
て、一見役に立たないような人でも、これま
でにない新しいことに挑戦できる可能性があ
るかも知れないから、そういう人材を活かす
ような配慮が求められるのだろうが、それが
特定の政治勢力や政府の言うことを聞くよう
な人材などではそうはいかないわけで、逆に
国家権力に反逆するようなことを平気でやる
ような人材でないと、これまでにない新しい
発想は生まれてこないのかも知れないし、そ
ういう人材が生きられて活動できるような余
地が社会にないと、社会全体が硬直化してき
て、政府の言うことに従順に従い、国家が決
める国家の役に立つような人材だけが一握り
の支配階級として独裁的な権力を振るうよう
な事態にもなりかねないが、政府の官僚機構
にとってはその方が統治しやすいだろうが、
統治しやすいということは、社会に多様性が
欠如していることになるわけで、そうなると
逆説的に産業が衰退していくことになり、産
業の衰退に伴って国家自体も衰退の一途を辿
ることになるのではないか。

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