彼の声 2010.7.19 | 彼の声

彼の声 2010.7.19

voice-79
別にそれが気に入らないわけではないが、
とりあえず人がこの世界でうごめいている。
君は虫けらか何かのたぐいか。
ならば本来の君からはかけ離れている。
ところで誰かは人なのだろうか。
ならば地上でうごめいているうちの一人か。
何を考えどんな行動に出ているのか。
たぶんそう述べているうちの何が冗談なのでもなく、
少なくとも何か適当なことを語っているはずだ。
どこから外れているとも思えない。
それは話ではないのかもしれない。
何の話でもなく、
誰が語るべき内容も有していない。
あるのはただ空疎と虚無のみか。
ならばただの冗談になる。
そう述べて何を裏切っているのでもない。
それらのどこに誰の期待が反映されているとも思えない。
では君はそういうことを語りたいのか。
君が語りたいのではなく、
誰かが言葉を記しているだけなのはわかっているつもりだ。
君がわかっているのではなく、
そのつもりで誰かが言葉を記しているということになるだろうか。
だから何がどうなのでもなく、
そういうことを述べているつもりなのだろう。
そしてそこで空疎な内容が提示され、
言葉が停滞している。
だが今さらそんなことに気づいてどうするのか。
とりあえず何を否定したいわけではなく、
それらのすべてを肯定したいわけでもない。

なかなかそこで何かを示せないようだ。
あるいは何を語るべきでもないのかもしれないが、
まともに言葉を記している状況に持っていきたいのだろう。
たぶんそれは難しい。
調子に乗って世の中で起こっている何かの現象を批判すれば、
手痛いしっぺ返しを被るか。
だから冗談を述べているわけでもないだろう。
そういえば近頃はマーカス・ミラーのベースに出会っていない。
二千数百曲の中からそれに出会うのはまれか。
誰かの音楽を聴きながら、
それとは無関係なことを思いつくが、
誰かの心が孤独なのか。
なぜそう思うのか。
この世界では何が問われることもない。
問われているのは何だろう。
だからこの世界そのものではなく、
それに比べれば枝葉末節なことだ。
誰かがどこかで何かを歌っていて、
そこで歌われている何かが、
問われるべき何かとは限らず、
何かの気休めか冗談のたぐいかもしれない。
そしてそこで思いついた何かが文章上に記されるとも限らず、
それについては何も語らずに何も記されないまま、
それらの試みは何も得られずに、
誰かは黙ってそこを後にしてきたらしい。
それが今ある現状となっているわけか。
それが何を意味するというのか。
たぶん何のことでもなく、
どうしたわけでもない。

そんな誰かの思いも夏空に溶け込んで、
強烈な日差しが思考力を鈍らせ、
次いで自らが何を考えているのでもないことを悟り、
退屈な日常の中で取り立てて何をするでもなく、
日々仕事に励み、
それが退屈しのぎだとは思えないが、
そんなことをやっているうちに老いて、
すでに手遅れであることに気づいた頃には、
この世ともおさらばか。
誰が誰と何を競い合うのも、
退屈しのぎの一言で片付いてしまうような気がするのは、
競争だとかいう行為の価値を軽く見ている証拠だろうか。
しかし何が無意味だとも思えず、
価値という言葉の意味を疑い、
人がやりたいことを冗談によって否定しようとして、
そんな無理を強引に語ろうとしている。
しかしなぜそれが無意味だと感じてしまうのか。
たぶん人は自らやっていることに格好がつけば
それで満足してしまうのだろう。
他人に評価してもらいたいのか。
誰かの身勝手でやっていることを
他の誰かに認めさせたいわけか。
それは虚しい自己主張になるだろうか。
そうであったとしても、
相変わらずそれをやめようとせず、
そうでなければ何をやったらいいのか
わからなくなってしまうだろう。
そこに何があるわけでもないのだろうが、
何かがあるようなふりをしていないと気が済まないのだろう。

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