毎年、元旦に私が必ずやることがあります。
それは新聞全紙に目を通すことです。
朝日新聞と日本経済新聞は宅配でとっているので、残りの読売、毎日、産経、東京、神奈川新聞を駅の売店まで買いに行きます。
正月は、新聞によって若干異なるものの、大手新聞には「エンタテインメント」と「スポーツ」の分冊が附録で付いています。
この分冊への広告をどれだけ取り込むことができるかが、我々広告会社の1月売上に大きな影響を与えるのです
当社の場合、クライアントは主にレコード会社と映画配給会社です。
今年の音楽で言えば、日本コロムビア(松山千春)、ポニーキャニオン(坂の上の雲DVD)、徳間ジャパン(ソナーポケット他)が当社扱いで、その他はエイベックス(辻井伸行)、ソニーミュージック(いきものがかり)、ビーイング(ザード)が他社扱いで正月の分冊に出稿されました。
さすが、ビーイング「ZARD」の朝日新聞分冊見開きカラー30段広告は迫力ありますね~。
しかし、この会社、いつまでB’zとZARDで食べていくのでしょうか
昨年との総段数比較は未だできていませんが、出稿件数で言えば、かなり落ちているという印象です
毎年、この正月分冊にレコード会社から出稿される件数が確実に減ってきているのです。
一方、音楽全般で言えば、いわゆるイベンターや事務所からの出稿になるコンサートやライブの広告は年々増えています。
一方、音楽を除いた映画やテレビドラマの出稿は相変わらず多い。
つまりレコード会社からの出稿件数のみが落ちているということになります。
これが今の音楽産業をそのまま象徴していると思います。
知っていますか?
日本のCDパッケージの売上は、今年の上半期実績で見れば、ついに米国を抜いて世界一になってしまったのです
それでも僅か1,570億円です。(これは日本レコード協会加盟社のみのパッケージ+配信売上の合計)
そのうちの80%がCDパッケージですから約1,250億円ということになります。
米国の場合、CDパッケージの比率が既に40%にまで低下してしまっているのですから日本に負けても仕方ないですね。
この数字は恐らく年間を通しても、大きくは変わらないでしょう。
でも、日本のCDパッケージ市場を支えているのは昨年発売した5枚のシングル全てが100万枚を超えたAKBやK-POPと呼ばれる韓国系アイドルグループ、そして一連のジャニーズ系作品なのです。
彼らを除いた売上となると、これはもう淋しい限りです。
しかし、彼らの主流はCDシングルですから、アルバムにまでは大きく結びつきません。
かつて宇多田ヒカルのアルバムが800万枚以上売れたなんていうのは夢みたいな話です。
特に日本では洋楽のアルバムが売れません。
昨年世界で一番売れたCDアルバムは英国の女性シンガー・ソングライター、アデルの「21」です。
- 21/アデル
- ¥2,490
- Amazon.co.jp
全世界で1,300万枚以上売れたアルバムが日本では、僅か5万枚です。
それでもCDパッケージの売上では、日本は世界一なのです。
何とも淋しい時代になってしまったものです
元レコード会社にいた人間にとってはホントに哀しい気持ちになります。
でも・・・・・・・・・・・・
先日、知人の紹介で1970年~1980年に活躍した往年の歌手たちを一同に集めた「同窓会コンサート」を中野サンプラザまで見に行きました。
いま、私の横にあるテレビではテレビ東京が放送している「カラオケバトル」という番組で、三浦和人が大ヒット曲「愛はかげろう」を歌っています。当時この曲を歌っていたのは雅夢というヤマハ出身のデュオで、三浦和人はこの曲の作詞・作曲者です。
1980年に生まれたこの曲は当時私がいたレコード会社から翌年発売され、私は雅夢の販促担当として、彼らの全国キャンペーンに同行していました。
結果、この曲は69.1万枚(オリコン)というセールスを記録し、この曲を収録した1stアルバム「夢つづり」も30万枚近い売上だったと記憶しています。
話はそれましたが、同窓会コンサートにはこの雅夢と同時代に活躍したアーティストたちが勢ぞろいしているのです。
チケット価格は6,000~7,000円と、決して安くありません。
それでも、昼夜2回の中野サンプラザはほぼ満席。
会場には50代~60代の女性が殺到しているのです。
CDは売れていないが、コンサート会場には中年女性が押し寄せる。
会場で見る彼女達の元気なこと、楽しそうなこと、とにかくライブをとことん楽しんでいるのです
キーワードはライブなのです。
これは何も中年女性に限ったことではありません。
コンサートプロモーターズ協会のまとめによると、2010.年の会員企業の公演入場者数は10年前に比べて57%、売上は55%伸びたと言います。
恐らく2011年はさらに伸びたに違いないと思います。
CDは売れないがライブへの入場者数は、年齢を問わず増えている。
これが今の音楽産業の実体なのです。
ここから先については、また別の機会に触れてみたいと思います。