誕生日に届いた悲しいニュース | ソフィアの森の「人生は、エンタテインメントだ!」

ソフィアの森の「人生は、エンタテインメントだ!」

音楽が好きで、映画が好きで始めたブログですが、広告会社退職後「ビジネスの教訓は、すべて音楽業界に学んだ」を掲載しました。

J・Dサリンジャーの死とシネカノンの倒産


1月28日は私のOO歳の誕生日でした。


その日、私にとって極めて印象深い2つの悲しいニュースが流れた。


その一つは、アメリカの作家J・Dサリンジャーが亡くなったという記事


J・Dサウザーではありません。


91歳。老衰だという。


孤高の作家だった。


1951年に発表された「ライ麦畑でつかまえて」(キャッチャー・イン・ザ・ライ)は、私が大学生の頃でさえも、米国文学、それもニューヨーカーに連載されるような作品の代表作として大きく耀いていた。


そんな影響もあって、学生時代の私は現代アメリカ文学を専攻し、ジョン・アップダイクやソール・ベローを読み漁った。


アップダイクの「走れうさぎ」を原書で読んだ時の何とも言えない高揚感。


今は見る影もないがしょぼん、当時は何とか原書で読むことができたのです・・・・・・・・・・・・・・・


ちなみに卒業論文はソール・ベローの「オギーマーチの冒険」でした。


その後ソール・ベローはノーベル文学賞を受賞したのだから、私にも少しは先見の明があったのかもしれない。


一方、当時でさえ、先輩格のサリンジャーは、学生の間で群を抜いて人気が高かった。


だからだろうか、大人社会のインチキを告発する主人公のホールデン・コールフィールドに似せた作品が出回った。


日本でベストセラーになった庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」にもそんな噂がつきまとった作品のひとつだ。


当時のテーマは「自分探し」・・・・・・・・・・・・・・・・・まるで中田英寿みたいだが、アイデンティティが流行語にさえなった時代に大学時代を過ごしたことは、ある意味貴重だったと思う。


高度成長の波に乗り、貧しい人はいなくなり、1億総中流家庭などと言われた元気な時代だった。


そんな恵まれた時代だからこそ「僕って何?」と、心の内に問いかける文学がもてはやされたのだと思う。..


社会との距離が広がり自分の内へ、内へと沈み込んでいく今の若者が「ライ麦畑でつかまえて」を読んだら、どう感じるのだろうか。


数年前に、村上春樹流「ライ麦畑・・・・・」を出版した彼の着眼点は素晴らしいと思う。


そして、2つ目の悲しいニュース


韓国映画「シュリ」や映画賞を総ナメにした「パッチギ」。そして大ヒット作「フラガール」等クオリティの高い作品を配給してきたシネカノン が47億300万円という負債を抱えて倒産した。


映画業界ではムービー・アイ・エンタテインメントに続く大型倒産である。


シネカノンは「フラガール」で映画ファンドを組成し、大成功。


その後も大型ファンドにより良質な作品を作り続けてきたが、ヒットがなければファンドへのリターンもない。


ファンドの行き詰まりと共に会社も傾いていった。


有楽町駅前の一等地に自前の劇場を持ったことも経営を圧迫したのかもしれない。


私はシネカノン代表の李鳳宇さんを個人的に知っている。


知っているだけではなく尊敬している。


合併前の広告会社で映画部門の責任者だったとき、当時まだ渋谷の円山町の奥にあったシネカノンによく通った。


夜、シネカノンを訪ねるとき、途中の円山町のラブホテル街を抜けて行くのだが、これが何とも気恥ずかしい。


当時、社員の人たちはどんな思いでこの道を通ったのだろう。


「シュリ」がヒットした直後で勢いもあった。


働く社員も若い。


当時から代表の李鳳宇さんの話を聞いていた。


映画に賭ける情熱の深さ。


祖国・韓国に対する愛の深さ。


とにかく冷静に燃えている映画人という印象でした。


こういう素晴らしい映画人が経営し、良質な作品を発表し続ける配給会社が倒産することはとても淋しいし、悔しい。


何とか立ち直ってほしいと思います。


世界各地の映画祭で賞を獲り、話題となりながら日本公開が決まらなかった「フローズン・リバー」。


既存の配給会社ではなく、李さんと同じく渋谷で単館の劇場を運営している「シネマライズ の頼社長が自ら買い付けてようやく公開にこぎつけたという。(30日から順次公開)


最近の大手配給会社はテレビ局の力を借りた作品には積極的に協力するが、良質だがヒットの見込みがない作品の買い付けには及び腰だ。


映画は確かにビジネスだが、芸術でもあるということを日本の配給会社の幹部たちは今一度思い起こしてほしい。


以前勤めていたレコード会社のM先輩に言われたことがある。


「人間には右手と左手がある。右手(利き手)は目先のヒットを作る。左手は未来の財産を作る。左手だっていつかは右手になりたいと思っている。だから左手の存在を忘れるようなディレクターにはならないで。」


お酒飲みでユニークな先輩だったが、良い事も言っていたなあ~ と懐かしく思い出しました。


シネカノンが配給する作品は左手かもしれない。


「フローズン・リバー」だって間違いなく左手だろう。


日本の大手配給会社は左手の存在を忘れている。


だから、私は「フローズン・リバー」を絶対に観るし、微力だが応援しようと思う。

まだ読んでいる本。

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