情報を伝えるだけのサイトは無意味だというのに・・・・・
某大手出版社のインターネットセクションの方々とこの6ケ月間、一緒に仕事をしてきましたが、虚しさのうちにフエィドアウトしてしまいました。
雑誌の売上は全体的に低迷し、勝ち負けの差がハッキリしてきました。
勝ち組はストリート系やギャル系に強い宝島社などの比較的新興の出版社です。
多くの雑誌がWEBサイトを持ち、雑誌とWEBの連動で仕掛けを行い広告を獲得する。
しかし、いつも中心にあるのは雑誌本体の広告売上であり、WEBは広告を獲得するための補完メディアとしてしか位置づけていません。
WEBコンテンツについても最終的な決定権を持っているのは雑誌の編集長です。
たまたま編集長がWEBに理解のある人であればよいが、そうでなければWEB独自の展開など全く望めません。
冒頭に記した某大手出版社も例外ではありませんでした。
私たちの窓口になっているのは雑誌全体を網羅するWEB事業部で、彼らのミッションはインターネットを通じて新しい収益を創造することです。
しかし、先行投資はしない、編集長の顔色ばかりうかがう、打ち合わせにはいつも本誌の広告担当者が同席する等々、これではWEB独自の展開など望むべきもありません。
そのくせヤフー!のような巨大ポータルサイトには惜しげもなく自社のコンテンツを提供する。
その結果、せいぜいできるのは雑誌で紹介された商品のネット販売、いわゆるECショッピングぐらいです。
雑誌を購入する人は、わざわざ書店やコンビニに足を運ぶ人たちで、その多くが目的買いですから、このコンタクトポイントのままでは新しい読者を獲得することはできません。
WEBは規制に捉われず多くの人が訪れる可能性のあるメディアです。
その集客に必用なのが魅力あるコンテンツです。
このコンテンツ掲載に制約がある。
さらに言うと、現在広告モデルとして成功しているWEBサイトには殆どがSNS型の交流機能が付いています。
「カカクコム」然り。「アットコスメ」然り。その他、数え上げたらきりがありません。
メディア側から一方的に情報を流すだけのサイトにユーザーは集まりません。
賢い今のユーザーは消費者の本音が知りたいのです。
ユーザーが集まらない場所ではビジネスが生まれません。
このことを口を酸っぱくして言っても雑誌社の人たちは首を横に振るだけです。
交流型にすると悪口を書かれる。悪口を書かれるとスポンサーの評判が落ち、広告収入に影響する。
悪口を書かれても書かれなくても、雑誌の販売部数が低下しているというのに・・・・・・・・・・・・・・
これは何も出版社だけでなくテレビ局など既存大手メディアでも概ね同じ傾向にあります。
WEBの力、真のクロスメディアというものを全く理解していないし、理解しようとも思っていません。
既存のインフラをひたすら守り、既存のスポンサーに悪影響を与えると思われるものは徹底的に排除する。
これでは、消費者の目線からどんどん離れていくばかりです。
これほど過去の栄光にすがり、変革しないメディアの末路とは・・・・・・・・・・・・・・
インターネット系のビジネスで成功している企業はいずれも徹底的な消費者目線を貫いています。
最近、私が大ヒットだと思った企画があります。
モバゲータウンでお馴染みのDeNAが運営するシニア向けの交流サイト「趣味人倶楽部」( シュミートクラブ)が展開している「創作広場」というコーナーです。
創作広場とは、
「趣味人倶楽部の会員なら誰でも自由に小説や詩、俳句、川柳、短歌などの作品を公開できる広場です」
と書いてあります。
若者にケータイ小節があるのならばシニアにだってWEB小説があってもおかしくない。
シニアの人たちは元々書くことが好きな人たちが多いと思います。
小説に限らず詩や短歌や俳句を投稿して、多くの人にコメントしてもらえたらどんなに嬉しいか。
そういう観点か見ると、この企画は大ヒットする可能性があります。
おまけに素人の投稿だけでなく、第一回は北村薫さんの書き下ろし作品が掲載されていますし、この後は山本一力さんの作品と続くそうです。
この辺りの展開も上手いです。
先ほどこの創作広場にアクセスし、ジャンルごとの投稿数を調べたら
詩(594)、日常エッセイ(204)、恋愛小説(108)、短歌(89)、ノンフィクション(88)、俳句(84)、川柳(70)、ミステリー、推理小説(37)、その他(247)の合計1521件が投稿されています。
この創作広場が開設されてから確かひと月も経っていないと思います。
この中からケータイ小説ではありませんが、ヒット作品が生まれてくる可能性だってあるかもしれません。
シニアの創作力を侮ってはいけません。
ちなみに現時点での人気作品ベスト5は以下のとおりです。
1位:浮気日誌
2位:暴走主婦、どこに行く
3位:2度目の恋
4位:幸福の代償
5位:男なしでは
う~ん、考えさせられてしまいます。
やはり恋愛系が多いようです。
高級品を扱うデパート大手の高島屋が安売りのユニクロを招致したり、キリンがライバルのサントリーとの経営統合を目指したりと、予期せぬことが起こり得る時代です。
過去の名声や栄光にすがっていては生き残れません。
雑誌社の人たちも、もう少し大きな視野でWEBとの付き合い方を本気で考えたらどうでしょうか?