映画とオペラの最高で贅沢な出遭い。
いくつかのシェークスピア作品を映画化し、超大作「ハムレット」の演出・主演をしたかと思うと、「フランケンシュタイン」や「ハリー・ポッター」のようなエンタテインメント作品にも出演したりと、その天才、異才ぶりが常に注目されているケネス・ブラナー。
まず、ケネス・ブラナーがモーツァルトのオペラを映画化したと聞いただけで心が逸り、一刻も早く見たい!という気持ちを抑えることができませんでした。
まずは意表を突いた時代設定(第一次世界大戦)と奇抜な演出に驚かされます。
しかし、この時代設定が見事にはまり、この作品は単なるオペラの映画化という枠を超え、不滅の反戦映画としての重みさえ感じることができるものになったのではないでしょうか。
モーツァルトの音楽の素晴らしさとケネス・ブラナーの斬新な演出に感動して満足度90点!
歌劇「魔笛」のおさらい・・・・
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲によるこのオペラは1791年に完成、モーツァルト最後のオペラと言われています。事実、1791年9月30日にこのオペラが初演された後、同年の12月にモーツァルトは亡くなっています。
当時ヨーロッパ各地を巡演していた旅一座のオーナーであるシカネーダという人が、生活に困窮していたモーツァルトに作曲を依頼したと言われています。
シカネーダの興行は宮廷歌劇場と違って一般市民を対象としており、演目もされにふさわしく、形式ばらず分かりやすいものを中心としていました。
だから「魔笛」の各所には聴衆を楽しませるスペキュタクラーな仕掛けが散りばめられています。(初心者向けです!)
主役の一人である「夜の女王」の登場シーンもそのひとつで、空中から登場したり、セリから突然現れたりする演出が特徴です。
ブラナー演出では、何と「戦車」に乗って登場してきます!
さらに有名なアリア「地獄の怒りに燃えるこの胸」を歌うシーンではCG処理された「夜の女王」がスーパーマンのように空を飛んでしまうのです。
人間の怒り狂ったヒステリーをこれほど見事な音楽で表現した例は恐らく空前絶後ではないでしょうか。モーツァルトが天才たるゆえんだと思いますが、その怒りを空飛ぶ夜の女王にして表現したケネス・ブラナーの演出にも驚きました!
この映画の魅力は主人公のタミーノでもなく、パミーナでもありません。個人的にはザラストロ役のルネ・パーペにあると思いました。
オリジナル版のザラストロは神殿に住む高僧ですが、映画では夜の女王と戦う慈悲深い司令官として描かれています。
ルネ・パーペは、心に響く重低音で、終盤ににアリア「ここで暮らす者たちは」を感動的に歌います。
モーツァルト最高のオペラ「魔笛」。この映画はオペラを知らない人でも充分に楽しめます。