Comment:
定年退職を迎えた鉄道員の人生観。
ノルウェーのベント・ハーメル監督の作品です。このまったり感がたまりませんねぇ。北欧だけあってアキ・カウリスマキ監督作品と雰囲気は似ていますが、ハーメル監督の場合はコミカルなシーンの「可愛らしいさ」が際立っていると思います。
邦題は「ホルテンさんのはじめての冒険」ですが、「冒険」と言ってもどこか遠くへ旅立つというわけではありません。
「冒険」とは「人生の冒険」でした。
定年退職を迎える鉄道員オッド・ホルテン。67歳。列車の音が鳴り響くオスロの駅の近くに住み、規則正しい生活を続けていました。
退職前夜、送別会が開かれ同僚たちの前で表彰されるオッド。会が終わり同僚の家で飲むことになりましたが、オッドはたばこを買いにみんなから少しの間離れることに・・・。
戻ってきたオッドでしたが、教えられたアパートの暗証番号を押してもドアが開きません。しかし、都合良くそのアパートは現在工事中で足場が作られていました。オッドはその足場を使って、最上階の同僚の部屋へ行こうとしますが、階下の部屋までしか辿りつけませんでした。
そこで、オッドはその部屋へ忍びこみ玄関から出ようとするのですが、住んでいる少年に声をかけられてしまいます。少年は鉄道員の制服を着たオッドに興味津津。オッドは少年を寝かしつけようとしますが、少年はオッドを引き留めようとします。
困ったオッドは、しばらく少年の部屋にいることに・・・しかし、オッドはそのまま眠り込んでしまいます。
翌朝、オッドの退職日。オッドは大遅刻をしてしまい、最後に運転する列車は出発してしまいました。
その後、オッドはどのような行動をとるのか・・・。
人生という長いレールをひたすら直進していたオッドに、思ってもいなかったイレギュラーが起きました。
それでも列車は出発してしまったことにオッドは何を思ったのでしょう。
仕事中に泊まる宿の女主人スヴェアには、最後の乗務を終えたらオスロまで飛行機で帰ると言っていましたが、その計画もできずじまい・・・。
オッドは同じような生活をするとともに、いつも一歩先を計画していたのではないでしょうか。
それが一夜にして崩れてしまったオッド。しかも、人生の節目となる大切な日に・・・。
その後のオッドの行動は、今までとは違い無計画な行動だったように思います。でも、それが面白い。飛行場のエピソードは、「もしや、そのまま海外へ行ってしまうのか?」と思ってしまいました(^_^;
ヨットの売却。
全裸でプール。
なぜかハイヒール(^_^;
おそらく、今までのオッドであれば絶対にしなかったであろう行動ばかりだったのではないでしょうか。
そして、道端で寝そべっている男に話しかけることなどもしなかったことでしょう。
その男トリグヴェ・シッセネールがオッドの人生観をさらに変える人物になるのですが・・・。
オッド役のボード・オーヴェの醸し出す雰囲気が作品全体に広がっています。寡黙な男なのですが、愛らしくもあります。
ラスト。
母との面会。
タバコ屋の女主人との思い出話。
トリグヴェとの語らいと危険なドライブ。
そして、スキージャンプ場での自分試し。
オッドは人生を顧みて、これからの人生をリスタートするつもりだったのでしょうね。
少年の頃に得られなかった「勇気」を得るために・・・。
私はまだまだオッドの歳にはほど遠いですが、人生のレールは真っ直ぐではなく、歳をとっても、少しの「勇気」で分岐点を自ら増やすこともできるということを伝えているようでした。
ちなみに、劇中に登場する犬モリーはパルム・ドッグ賞審査員特別賞を受賞しています。
Title:
O' HORTEN
Country:
Norway/Germany/France (2007)
Cast:
(Odd Horten)BAARD OWE
(Trygve Sissener)ESPEN SKJØNBERG
(Fru Thøgersen)GHITA NØRBY
(Svea)HENNY MOAN
(Flo)BJØRN FLOBERG
(Steiner Sissener)KAI REMLOW
(Lokfører)PER JANSEN
(Konduktør)BJARTE HJELMELAND
(Vera Horten)KARI LOLAND
Director:
BENT HAMER
