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残されたフィルムに音を吹き込む音響技師と失踪した映画監督の行方。
ヴィム・ヴェンダース監督の作品です。リスボン市の依頼によってヴェンダース監督が製作した作品だそうです。
いやぁ、素晴らしい作品でした。言葉では言い尽くせない深い味わいのある作品です。
ドイツに住むフィリップ・ヴィンターは音響技師。彼のもとに一通の手紙が届きます。
「君の助けが要る。」
「続けられない。」
「リスボンに道具を持って早く来て欲しい。」
親友フリッツこと映画監督のフリードリヒ・モンローからでした。不安に感じたフィリップは、車でリスボンまで向かうのですが・・・。
「不安なら飛行機で行けばいいのに・・・。」なんて思ってはダメです(^_^;
不安と感じていなかったのかなぁ・・・とにかく、フィリップは気ままな1人旅へと洒落込みます。
この道中が笑えること。大昔の無声映画でありそうなコミカルなシーンの連続です。
さまざまなトラブルに遭いながら、ようやくリスボンにあるフリッツの家に着きますが、フリッツは不在でした。しかし、鍵は空けたままだったので、フィリップは部屋に入り待つことに・・・しかしいつまで待ってもフリッツは帰ってきませんでした。
フィリップは部屋に残された撮影済みのフィルムをもとに、1人でリスボンの町の音を録り始めるのですが・・・。
フィリップを撮り続ける少年ゼーと少女ソフィア。
フィリップを見つめるだけの少年リカルド。
そして、同じ建物で映画音楽を作るバンド「マドレデウス」。
彼らとフィリップとの交流が中盤のメインストーリーになります。子供たちとの交流は微笑ましく、フィリップの優しい人柄も心を和ませてくれます。
「マドレデウス」のシーンは必見です。暗い部屋の中で青いライトに照らされる女性ボーカリストのテレーザ。透明感のある歌声と異国情緒ある音色が幻想的な空間を創り出し視覚と聴覚を魅了します。
そう、この作品の特徴は、ズバリ「青」です。
フィリップの服やキャップ。
部屋のタイル画。
町のいたるところにある飾りにも「青」が目に留まります。
そして、何と言っても、リスボンに流れる広大な川と澄み渡る青い空でしょう。特に空のあの青さは日本では見れないのでは?あの空を見にリスボンへ行きたくなってしまうほどです。
しかし、都市化が進むリスボン。古い町並みが次第にコンクリートへと変わっていく様子も描かれています。悪いことではないのですが、何となく寂しくも感じられます。
その古さと新しさが終盤でのテーマになっているのかなぁ。町から都市へと変わりゆく姿を「映画界の昔と今」になぞらえているのでしょうね。
フィリップ役にはリュディガー・フォグラー。ヴェンダース監督作品に無くてはならない存在ですよね。初期作品の頃と比べて恰幅がよくなり、頭がさびしくなっていましたが、そこがまた魅力の1つになっています。役目はやっぱり「ヴィンター」なのね(^_^;
フリッツ役にはパトリック・ボーショー。彼はこの作品から12年前のヴェンダース監督作品「ことの次第」と同じ役として登場しています。でも、印象がまったく違うなぁ。本当に同じ役なのでしょうかねぇ。そういえば「ことの次第」のラストって・・・まぁ、いいか(^_^;
ラスト。
町から都市へと変わるように、音楽や映画も新しい技術から新たな作品を生み出されていくのでしょうね。でも、新しいものだけでなく「マドレデウス」のように古くからの民俗歌謡を取り入れることで、新しい作品を生み出すこともできることをこの作品では伝えていると思います。
ラストシーンからエンドロールでのフィリップとフリッツの2人を観ていると、また新しい作品が生まれるような予感がしました。
Title:
LISBON STORY
Country:
Germany/Portugal (1994)
Cast:
(Phillip Winter)RÜDIGER VOGLER
(Friedrich Monroe)PATRICK BAUCHAU
(Herself (Madredeus))TERESA SALGUEIRO
(Himself (Madredeus))PEDRO AYRES MAGALHÃES
(Ricardo)RICARDO COLARES
(Zé)JOEL CUNHA FERREIRA
(Sofia)SOFIA BÉNARD DA COSTA
Director:
WIM WENDERS
