Comment:
実在した天才ピアニスト兼作曲家の愛と苦悩。
パーヴェル・ルンギン監督の作品です。天才ピアニストにして作曲家でもあるセルゲイ・ラフマニノフの半生を描いています。しかし、すべてが事実ではないようで、映画としての脚色も加えられています。
ストーリーはアメリカに亡命したセルゲイがピアニストと作曲家の葛藤に揺れ動きながら、ロシア時代を回想する構成になってします。
ラフマニノフが作曲した中では「ピアノ協奏曲第2番」と「ピアノ協奏曲第3番」が人気があり、特に「ピアノ協奏曲第3番」は演奏者を選ぶほどの難曲だそうです・・・「シャイン」を観ていてヨカッタ(^_^;
でも、残念ながら楽曲の誕生秘話などはこの作品では語られません。この作品はセルゲイ・ラフマニノフの半生を借りたラブ・ストーリーなのかも・・・。
ニューヨーク、カーネギー・ホール。スタインウェイのピアノが置かれ始まるのはラフマニノフの演奏会。しかし、ボックス席にはソ連大使が・・・。彼らに気付いたセルゲイは観客に「ソ連大使の前では弾けない。」と亡命のいきさつを話します。
そのときからセルゲイは度々故郷を思い出します・・・。
1880年、ロシア。ショパンをこよなく愛するセルゲイ少年でしたが、音楽院での成績は悪く、両親が破産してしまいます。しかし、師になるズヴェレフの家に住み込み、ピアニストとして開花していきます。
そして、セルゲイは青年になると、自ら作曲し始めるようにもなります。しかし、ズヴェレフから「作曲なんかするんじゃない。ピアノだけを弾くんだ。」と作曲することを禁じられてしまうのですが・・・。
ズヴェレフ曰く、演奏と作曲は両立できないそうです。その感覚はよく判りませんが、亡命後のセルゲイを見る限りズヴェレフの言葉は正しかったのかもしれませんね。
さらにセルゲイはズヴェレフから3つの誓いを立てられていました。
嘘を付かないこと。
自慢しないこと。
そして、裏切らないこと。
しかし、セルゲイはチャイコフスキーとの面会の時間を遅刻してしまい、ズヴェレフと口論に・・・そして、誓いを裏切ってしまったことでズヴェレフから家を追い出されてしまいます。
セルゲイが裏切ってしまった理由は・・・恋でした。
セルゲイの運命を3人の女性が大きく動かします。
セルゲイが夢中になる魅力的なアンナ。
セルゲイが教師になったときに出会う教え子のマリアンナ。
そして、セルゲイを献身的に支える従妹のナターシャ。
セルゲイの創作意欲は愛するときに高まっているような印象を受けましたね。
それにしても、ロシアから離れるときのエピソードは事実なのでしょうか?何だか偶然にしては出来過ぎ感が・・・(^_^;
亡命後のアメリカツアーでは苦悩の表情しか浮かびません。ピアニストとしての活動に重きを置かれてしまい、作曲活動に専念できなくなってしまうのです。
しかし、ツアー中にセルゲイ宛てに花束が届けられます。
差出人のないライラックの花束・・・。
ライラックはセルゲイが愛する女性だけに贈る花でした。
はたして、ライラックの贈り主は誰なのか・・・。
意外とライラックが重要なアイテムだったとラストになって気付かされます(^_^;
原題が「LILACS」だったことを初めに知っておくべきでしたね・・・。
時代に翻弄されながらも、ひたすらピアノを弾き、作曲し続けたセルゲイ・ラフマニノフ。彼が本当に必要だった愛は彼の気付かないところにありました。
当たり前のようにあるからこそ気付かない愛・・・ラストシーンでは、セリフはなくても判り合えた確かな愛が描かれています。
Title:
LILACS
Country:
Luxembourg (2007)
Cast:
(Sergei)YEVGENI TSYGANOV
(Natalia)VIKTORIYA TOLSTOGANOVA
(Anna)VIKTORIYA ISAKOVA
(Marianna)MIRIAM SEKHON
(Steinway)ALEKSEI KORTNEV
(Zverev)ALEKSEI PETRENKO
(Anna Sergeevna)LIYA AKHEDZHAKOVA
(Doctor Dahl)IGOR CSERNYEVICS
(Aunt Satina)YEVDOKIYA GERMANOVA
(Shalyapin)OLEG ANDREYEV
Director:
PAVEL LUNGIN
