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エジプトの警察音楽隊とイスラエルの住民との交流。
イスラエルのエラン・コリリン監督の作品です。その年のカンヌ国際映画祭で注目され、日本でも東京国際映画祭の最高賞である東京サクラグランプリを受賞しています。
可愛らしいタイトルから厳格な音楽隊がオロオロするコメディなのかなぁと思っていたら、意外とシリアスな展開でしたね。
でも、ところどころシュールな笑いを散りばめて和ませています。
この作品を観る前に、やはりイスラエルとエジプトとの関係を知っておくべきなのかも知れませんね。
長年続くパレスチナ問題。
ユダヤ人とアラブ人の抗争。
歴史的背景を知っておくと、何てことはないストーリーがいかにすごいことなのかが判ります。
舞台はイスラエルの空港から始まります。
だだっ広い空港にポツンと立たされている音楽隊。彼らはエジプトから来たアレキサンドリア警察楽団。今回の依頼はベイト・ハティクヴァに建てられたアラブ文化センターの開所式での演奏でした。
しかし、来るはずのワゴン車がいっこうに来ません。
団長であるトゥフィーク・ザカリーアは市役所へ連絡しますが、話した途端に相手から電話を切られてしまいます。
トゥフィークが団長になって25年。いつも自力で切り抜けてきた彼は、団員カーレドに命令しバスの運行情報を受付嬢に問い合わせます。
無事にバスに乗れた音楽隊はベイト・ハティクヴァに到着。
しかし、そこは、見渡す限りの砂漠地帯。前方には人気のない町がポツンとあるだけでした。
トゥフィークは小さな食堂を経営する女性ディナに尋ねると、なんとここは「ペタハ・ティクヴァ」。トゥフィークは文字を読み間違えていたのです。
ディナによると、もう今日のバスはないと言う・・・はたして明日開催される開所式に間に合うのか・・・。
ここから繰り広げられる様々な人間模様がこの作品のメイン・テーマになります。
トゥフィークとディナ。
カーレドとディナの店に居候するパピ。
トゥフィークと最も付き合いの長いシモンとディナの店の客イツィク。
この3つのエピソードに共通して言えることはユダヤ人とアラブ人との微妙!?な交流でした。普通にデートして、普通に家に泊めてもらうだけなのですが、それすら歴史的にはすごいことなのでしょう。
シモンとイツィクのエピソードでは、聞かせたくないことを母国語で話す双方に、まだ少し隔たりがあるのかなぁと感じられました。イツィクの家族は、本当にただ怒っていただけなのかもしれませんが・・・(^_^;
トゥフィークとディナは大人のエピソード。厳格なトゥフィークが次第に穏やかになり心を開いていく様子を優しく描いていました。あんなに穏やかに語り合える2人。辛い過去を乗り越えてきたからなのでしょうね。
カーレドとパピのエピソードはコミカルなエピソードでしたね。おく手だったパピに恋の手ほどきをするカーレド。実にシュール。微笑ましいシーンでした。
これと言って大きな展開はありません。淡々と夜が更けていきます。でも、そこが良い。なんてことはないエピソードに意味を持たせているように感じられます。・・・でも、カーレドは結局しちゃうのねって感じでしたが(^_^;
ディナと別れるトゥフィークの最後の仕草が何とも可愛らしかったですね。
シュールな笑いを散りばめながら敵対していた異国異人種との微笑ましい交流は、ベント・ハーメル監督の「キッチン・ストーリー」に通じるものがありますね。
さらに、シュールな笑いと独特の間はアキ・カウリスマキ監督作品にも通じるので、フィンランドやノルウェー、スウェーデンなどの北欧作品が好きな人にもオススメの作品かもしれませんね。
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Title:
BIKUR HA-TIZMORET
Country:
Israel/France/USA (2007)
Cast:
(Lieutenant-colonel Tawfiq Zacharya)SASSON GABAI
(Dina)RONIT ELKABETZ
(Haled)SALEH BAKRI
(Simon)KHALIFA NATOUR
(Papi)SHLOMI AVRAHAM
(Itzik)RUBI MOSKOVITZ
Director:
ERAN KOLIRIN
Awards:
Cannes Film Festival 2007
(Award of the Youth)ERAN KOLIRIN
(FIPRESCI Prize(Un Certain Regard))ERAN KOLIRIN
(Un Certain Regard - Jury Coup de Coeur)ERAN KOLIRIN
