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知的障害の男の悲劇。
原作者ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」の映画化作品です。十代の頃、原作を読もうと本屋へ買いに行ったのに、なぜか「24人のビリー・ミリガン」を買ってしまったという思い出があります。
あれから20年。未だに原作は読んでいなかったので、「じゃあ、映画で。」ということに・・・(^_^;
この作品の上映時の邦題は「まごころを君に」。
観終わった後に思ったことは、「「まごころを君に」のほうが、しっくりくるなぁ。」ってことでした。
アルジャーノンがあまり活躍しません。もちろん、主人公チャーリー・ゴードンの親友として描かれていますが、どちらかというと、チャーリーとチャーリーを支えた女性教師アリス・キニアンとのラブ・ストーリーがメインになっているようです。
アルジャーノンは作品の象徴のような存在でした。
知的障害者のチャーリーは、パン屋の掃除夫として働きながら、知的障害者のための夜間学校に通っていました。
パン屋ではからかわれてばかりいるチャーリー。でも、それがいじめだと気付きません。気付くことができないのです。
夜間学校と併設されている研究所では知能を向上する実験が行われていました。
動物実験で手術を施されたネズミ・・・その名は「アルジャーノン」。
アルジャーノンと迷路を解く競争をするチャーリーでしたが、勝つことができません。チャーリーのIQは70でした。
チャーリーは夜間学校の女性教師アリスに言います。
「利口になったら友達の話がわかるもの。」
「今はよくわからないんだ。」
「利口になってもっと仲良くなりたい。」
ニーマー教授とストラウス博士にチャーリーの手術を推薦するアリス。
そして、チャーリーに手術が施されるのですが・・・。
より多くのことを知る幸せ。
何も知らずに生きる幸せ。
どちらが本当の幸せなのか。チャーリーはどうだったのでしょう。IQは飛躍的に向上し、天才の域にまで達してしまいます。
しかし、それは知識の上でのこと。長い時間を積み重ねて得られる経験、精神面はどうやらIQのようにはいかないようです。
そして、チャーリーはアルジャーノンを通じて「ある事実」を知ってしまいます。
チャーリー役のクリフ・ロバートソンの演技に注目です。天才になったチャーリーと過去のチャーリーが対峙するシーンがあるのですが、表情がまるで別人です。ストーリーの流れのまま彼を見ているときは、そんなに変わっていないのではと思っていたので、ちょっとした驚きがありました。この作品で見事アカデミー賞主演男優賞を受賞しています。
ラストシーンのチャーリーは幸せそうです。アリスはどう思っていたのでしょうか。これでよかったと思いながらチャーリーを見つめているのでしょうか。アリスはチャーリーを今後も支えていくのでしょうね。
チャーリーの笑顔はオープニングでの笑顔と同じように見えますが、彼の頭にはきっと知識を得る喜びとアリスとの思い出が詰まっている・・・オープニングとは違う幸せに満たされた笑顔のようにも見えました。
「まごころを君に」。
それは、チャーリーからアリスへの、そして、アリスからチャーリーへの感謝の言葉なのかもしれませんね。
やっぱり、原作も読んでみようかなぁ。
Title:
CHARLY
Country:
USA (1968)
Cast:
(Charly Gordon)CLIFF ROBERTSON
(Alice Kinian)CLAIRE BLOOM
(Dr. Anna Straus)LILIA SKALA
(Dr. Richard Nemur)LEON JANNEY
(Mrs. Apple)RUTH WHITE
Director:
RALPH NELSON
Awards:
Academy Awards, USA 1969
(Oscar(Best Actor in a Leading Role))CLIFF ROBERTSON
Golden Globes, USA 1969
(Golden Globe(Best Screenplay))STIRLING SILLIPHANT
