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ドイツ軍に占領されたローマに暮らすイタリア人たちの物語。
その年のカンヌ国際映画祭グランプリを受賞したロベルト・ロッセリーニ監督の作品です。1940年代から1950年代のイタリア映画界のムーブメントとなった「ネオレアリズモ(イタリアン・リアリズム)」のきっかけとなった作品でもあります。
ナチス・ドイツというと、やはりユダヤ人への大量虐殺が多く取り上げられますが、イタリア人に対しても弾圧をしていたのですね。
第二次世界大戦。イタリアが連合軍に降伏した後、同盟国であったはずのドイツに占領されてしまいます。
ローマはゲシュタポ(ナチス・ドイツの秘密警察)によって支配されてしまいます。今までの暮らしに制限が与えられ、ローマに暮らすイタリア人たちは貧困に苦しみます。
しかし、影ではレジスタンスが反撃のきっかけを窺っていました。
反ナチ解放戦線の幹部であるマンフレディがローマへやって来たのです。同志であるイタリア人のフランチェスコは、ゲシュタポの摘発を避けるために、近く結婚する予定の婚約者ピナのアパートに彼を匿ってもらいます。
レジスタンスは反撃の準備を進めていましたが、夕刻からはゲシュタポにより外出禁止となるため、身動きがとれません。そこで、彼らは唯一行動が許されているピエトロ神父に、レジスタンスの資金を本部に届けてもらうとするのですが・・・。
あまりの貧しさにパン屋を襲う家を守る女性たち。
ゲシュタポから隠れるように、小声で対話するレジスタンスたち。
子供たちだけで結成したレジスタンス。
ピリピリするような緊迫感の中、唯一、安らぎを与えてくれるのはピエトロ神父でした。ゲシュタポの残虐極まりない行為に、神父もレジスタンスに加担しますが、罪を犯した人も寛大に赦し、生きることを強く訴える・・・まさに聖人でしたね。
マンフレディは人気女優マリナ・マリの恋人でもありました。しかし、マンフレディはマリナとの恋を一方的に終わらせてしまいます。未だ諦めきれないマリナ。華やかな舞台に立ち、裕福な暮らしを得られたものの、独りの女性がこの時代を生き抜くにはつら過ぎました。
マリナはドラッグにのめり込んでいたのです。
そして、フランチェスコとピナの結婚式の日から悲劇が始まってしまいます・・・。
ピナ役のアンナ・マニャーニの熱演が胸を打ちます。序盤から中盤にかけては彼女が主人公といっても過言ではないですね。逞しく生きるイタリア人女性を力強く演じています。
また、ピナの婚約者フランチェスコ役のフランチェスコ・グランドジャッケットとピナの前夫との子マルチェロ役のヴィトー・アンニキアリコのシーンも胸を打ちます。
終盤ではマンフレディ役のマルチェロ・パリエーロ、ピエトロ神父役のアルド・ファブリッツィの熱演が光ります。
イタリア人として誇りを決して失わないマンフレディ。
ゲシュタポたちに対して最も人間らしい感情を顕わにしたピエトロ神父。
この作品は戦後に製作されたものではなく、戦時中にナチス・ドイツの目を盗んで製作されたことに衝撃を受けました。キャストたちの緊迫感が画面から伝わってきます。
ゲシュタポのドイツ将校ベイルマン役のナンド・ブルーノと謎の女性イングリッド役のジョヴァンナ・ガレッティも悪役として好演しています。
マリナ役のマリア・ミーキもヒロインかと思いきや意外な展開をみせましたね。威勢のいい態度とは裏腹に、心は弱かったのかなぁ・・・。
ラスト。
大好きなピエトロ神父の姿を見つめている子供たち。
寂しそうにその場から立ち去ります。
どうすることもできない悲しい現実。しかし、彼らだけでレジスタンスを結成したほどです。心の中には小さな炎が燃え始めてしまったのではないでしょうか。
「無防備都市」・・・心が無防備な子供たちには過酷な都市でした。
ちなみに、夫や子供、ハリウッドでのキャリアを捨ててまで、ロベルト・ロッセリーニ監督のもとへ走った大女優イングリッド・バーグマンは、この作品を観たことがきっかけだとか・・・この作品のマリナとは正反対・・・愛に生きる女優ですね。
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Title:
ROMA, CITTÀ APERTA
Country:
Italy (1945)
Cast:
(Don Pietro Pellegrini)ALDO FABRIZI
(Pina)ANNA MAGNANI
(Giorgio Manfredi aka Luigi Ferraris)MARCELLO PAGLIERO
(Marcello)VITO ANNICHIARICO
(Agostino)NANDO BRUNO
(Major Bergmann)NANDO BRUNO
(Ingrid)GIOVANNA GALLETTI
(Francesco)FRANCESCO GRANDJACQUET
(Marina Mari)MARIA MICHI
(Lauretta)CARLA ROVERE
Director:
ROBERTO ROSSELLINI
Awards:
Cannes Film Festival 1946
(Grand Prize of the Festival)ROBERTO ROSSELLINI
New York Film Critics Circle Awards 1946
(NYFCC Award(Best Foreign Language Film))
