Comment:
天才ピアニストの女囚と女性ピアノ教師の心の交流を描いたヒューマン・ドラマ。
心に突き刺さるというより、砕かれるような攻撃的な作品でした。
ルッカウ刑務所に足げに通う初老の女性クリューガー。若かりし頃、天才ピアニストと謳われた彼女でしたが、なぜか、この刑務所に固執し、囚人や刑務官たちにピアノを教えていました。
しかし、クリューガーを快く思わない刑務所長や職員たち・・・。ただでさえ経費がかかる上に、生徒数が少ないことも悩みの種になっていました。
今回、教える生徒は囚人が4人。しかし、1人が自殺したため3人になり、あとは唯一クリューガーを師として慕う刑務官のミュッツェだけでした。
ピアノなど触ったこともないような囚人たちに教えるクリューガーでしたが、最後の生徒ジェニーだけは違いました。
ジェニーにはピアニストとしての天性の素質があったのです。クリューガーはジェニーを鍛えてコンクールに出場させようとしますが・・・。
まぁ、ジェニーのキレまくりには驚かされました(^_^;
ミュッツェを半殺しにしたり、病院の窓から身投げしようとしたり・・・。彼女には守るものが何もないからなのでしょうね。自分自身すら守ろうとしていないのが、同じ囚人に対する態度にも表れていたような気がします。
でも、彼女にも守るものができました。それはピアノ。ピアノこそ自分を表現できる唯一の存在だったのではないでしょうか。そのピアノを弾くためにはクリューガーとのレッスンを受ける必要があり、さらに、クリューガーからの4つの規則を守らなければなりませんでした。
今までのジェニーであれば、守るはずもない規則でしたが、ピアノを弾くためにジェニーは承諾します。
一方、クリューガーはジェニーに何を見ていたのでしょうか。クリューガーが言うように、ジェニーへの個人的な関心は微塵もなかったように思います。
ジェニーが奏でるピアノの旋律。
それを聞くためだけにジェニーのレッスンを引き受けていたように感じました。ジェニーのピアノを聞くと、過去の自分が甦り、そして、愛するハンナに出会えると・・・。もしかしたら、ピアノの才能があったかもしれないハンナ・・・。
クリューガーは、ジェニーをハンナの生き写しだと思っていたのかもしれませんね。いくらジェニーが衝撃の過去を語っても、微動だにしないクリューガーには、ジェニーに対する情などないようでした。
ジェニーの過去は散々でしたね。あれだけ、いろんな人から裏切られれば人間不信になってしまうのも当然ですよね。無実と判っていながら刑務所暮しを選んだのは、亡くしたわが子への償いのためでもあったのかもしれませんね。
ラスト。コンクールの出場を決めたジェニーでしたが、ミュッツェの策略により、今度は同じ囚人の女性を半殺しにしてしまい刑務所ではジェニーの出場を辞退する動きが・・・。
嫌な奴に見えてしまうミュッツェでしたが、彼は純粋にピアノを愛し、そして、クリューガーを慕っていたんだと思います。最後にやってくれましたね。
ドイツ・オペラ座。
大観衆が見守る中、ジェニーの演奏が始まります。今まで裏切られてきたジェニーが、今度はクリューガーを裏切ります。でも、その時、初めてクリューガーはハンナのピアノではなく、ジェニーの心の叫びでもあるピアノを感じたのではないでしょうか。
あの4分間の演奏には、真実がありました。
スタンディングオベーション。
クリューガーの涙。
クリューガーに対するジェニーの礼・・・すべてが真実なのだと思います。
共感するには程遠い2人でしたが、ラスト4分間でモヤモヤを吹き飛ばすほどの爽快感を味わうことができました。
Title:
VIER MINUTEN
Country:
Germany (2006)
Cast:
(Traude)MONICA BLEIBTREU
(Jenny)HANNAH HERZSPRUNG
(Mütze)SVEN PIPPIG
(Kowalski)RICHY MÜLLER
(Ayse)JASMIN TABATABAI
(Direktor Meyerbeer)STEFAN KURT
(Gerhard von Loeben)VADIM GLOWNA
(Nadine Hoffmann)NADJA UHL
Director:
CHRIS KRAUS
