サラエボの花 | ひでの徒然『映画』日記

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サラエボの花


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ボスニア紛争後のボスニアで懸命に生きる母娘の物語。


これが、実際に行われていた史実だと思うと・・・悲しみとともに怒りも込み上げてくる非情な物語でした。


母エスマと娘サラは2人暮らし。それでも、家計が苦しいためエスマは、夜はバーで働くことを決めます。エスマは急いでサラの修学旅行費200ユーロを稼ぐ必要がありました。


エスマの苦労など知る由もないサラは男勝りで勝気な少女。同級生の少年サミルと喧嘩することも。しかし、サラが「私の父は戦争で亡くなったシャヒード(殉教者)」と打ち明け、同じ境遇であったサミルと次第に打ち解けていきます。


サラはシャヒードの家族であれば旅費が免除されることを伝えますが、エスマは今は父親の死亡証明書はないので、いずれ取りに行くと応えたまま、いつまで経っても取りに行くことはありませんでした。


不審がるサラ。父の死に疑問を抱き始めます。


しばらくして、サラは修学旅行に行けるようになります。しかし、それはエスマが稼いだ200ユーロによるものでした。死亡証明書さえ渡せば免除になるのに・・・。サラはエスマに詰め寄りますが・・・。


サラにとっては自分の存在すらも否定することになってしまうほどの悲しい真実。そして、その真実をひたすら隠しながらサラを1人で育ててきたエスマ。


エスマが通うセミナーで、涙ながらに告白するエスマの姿は、今まで抑えていた本当の気持ちが次から次へと溢れ出しているかのようでした。


エスマが語る真実は痛ましいものでした。しかし、隠していた真実を語ることでエスマは改めて実感します。


サラを心の底から愛していることを・・・。


イザベル・コイシェ監督の「あなたになら言える秘密のこと」のヒロイン、ハンナもそうでした。思い出したくもないことは誰にも語らない戦争の被害者たち・・・。しかし、どちらの作品も真実を語ることで、心のわだかまりが少しでも解消されていくことを繊細かつ丁寧に描いています。


この作品のヤスミラ・ジュバニッチ監督は女性であり、そして、ボスニアで生まれ育った経験をこの作品に投影しているのではないでしょうか。ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞しています。


ラスト。エスマに「父に似ている」と言われていたサラの髪。サラの行為は夢でしか想像できなかった父との別れを決意したのでしょう。芯の強い少女です。そんなサラに何も言えないエスマ・・・サラも何も語りません。


でも、2人は知っています。2人で生きていく。2人は本当の親子なのだから。無言で交わしたあの笑顔がこれからの2人を物語っているようでした。


それでも、人間は紛争を繰り返してしまいます。民族紛争は、根付いた歴史にもよりますが、この作品を観て、武力による侵攻が本当に正しいものなのかを考えるべきだと思います。


エスマとサラのように、幸せであっても心の傷は一生消えない人たちがサラエボにはいるのでしょう・・・。



にひひにひひにひひにひひ



Title:

GRBAVICA


Country:

Austria/Bosnia-Herzegovina/Germany/Croatia (2006)


Cast:

(Esma)MIRJANA KARANOVIC

(Sara)LUNA MIJOVIC

(Pelda)LEON LUCEV

(Samir)KENAN CATIC

(Sabina)JASNA BERI

(Cenga)DEJAN ACIMOVIC

(Saran)BOGDAN DIKLIC

(Puska)EMIR HADZIHAFIZBEGOVIC

(Profesor Muha)ERMIN BRAVO

(Pelda's Mother)SEMKA SOKOLOVIC-BERTOK

(Jabolka)MAIKE HÖHNE


Director:

JASMILA ZBANIC


Awards:

Berlin International Film Festival 2006

(Golden Berlin Bear)JASMILA ZBANIC

(Peace Film Award)JASMILA ZBANIC

(Prize of the Ecumenical Jury(Competition))JASMILA ZBANIC



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