父、帰る | ひでの徒然『映画』日記

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父、帰る


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十数年ぶりに帰ってきた父と父との思い出など無い2人の息子の1週間を描いた人間ドラマ。


何て言ったら良いのか・・・。虚無感・・・。後悔・・・。何だろう・・・切なく悲しい物語でした。


幼い頃から母と祖母に育てられた兄アンドレイと弟イワン。父が居なくても逞しく育った2人の前に突然、記憶に無い父が帰ってきました。


写真でしか知らない父の姿に喜ぶアンドレイ。しかし、イワンは猜疑心の強い目で「その人」を見ていました。


初めての食事。アンドレイとイワンは、母から水で薄めたワインを渡され、家族みんなで祝杯をあげます。


でも、その場には「一家団欒」という雰囲気はありません。そんな中、父が2人の息子と旅行に行くと言い出します。1泊の小旅行で近くの滝で魚釣りやキャンプをしようと計画します。これにはイワンも喜びます。


そして、翌日。父と2人の息子は旅立ちますが・・・。


アンドレイとイワンは、この旅行で様々なトラブルに出会います。


それでも、終始、アンドレイは父に憧れ、イワンは反抗します。この2人の正反対な性格は、今までアンドレイはイワンの父親代わりもしていたのかなぁとか、イワンは近所の子供たちからいじめられても父がいないから助けてもらえなかったことへのイヤミやワガママが出てしまっているのかなぁと想像してしまいます。


しかし、イワンの父に反抗する態度は尋常ではありませんでした。


父を父と呼ばず、仇のように睨むイワンの目。


そんな父とイワンを間を取り持とうするアンドレイ。何て良い兄なんだと思う反面、協調性があり過ぎて人に流されてしまうタイプなのかなぁと見受けられる場面もありました。


反抗してまで我を通そうとするイワン。

協調性を大事にするアンドレイ。


これが父が居ない生活の中で自然と身に付けた2人の生き方なのかもしれませんね。


そして、父は感情を表に出さずに2人の息子に命令し、親の威厳を保とうします。時には暴力を振るうことも・・・。


イワン役のイワン・ドブロヌラヴォフの演技が秀逸です。彼の演技力でこの作品の重厚さが倍増したように感じます。


父役のコンスタンチン・ラヴロネンコも謎めいた父親像を好演しています。


アンドレイ役のウラジーミル・ガーリンも素晴しいです。終盤のストーリーは、イワンだけではとても耐えられなかったでしょうね。アンドレイが居たからイワンも正気を保てたと思います。弟を守ろうとする兄の想いが演技から伝わってきます。


三者三様。絶妙かつ危険なバランスでストーリーも終盤へと進みます。


そして、衝撃のラスト。


父は何のために帰ってきたのでしょうか。

父は何のために小旅行を計画したのでしょうか。

父は子供たちを愛していたのでしょうか。


そして、父が掘り起こした箱の中身はいったい何だったのでしょうか。


父は何となく裏の商売をしていそうな気配があったので、稼いだ大金が入っていたのか・・・。

それとも、まだ赤ん坊の頃のアンドレイとイワンの写真が入っていたのか・・・。


何も知らないアンドレイとイワン。


彼らの今後の苦痛を考えると、とても明るい未来があるとは思えないところが悲しいです・・・。


しかし、明らかにこの1週間でアンドレイとイワンは逞しくなったと思います。これからも母や祖母を悲しませないように逞しく生き抜いて欲しいですね。



にひひにひひにひひかお



Title:

VOZVRASHCHENIYE


Country:

Russia (2003)


Cast:

(Andrey)VLADIMIR GARIN

(Ivan)IVAN DOBRONRAVOV

(Father)KONSTANTIN LAVRONENKO

(Mother)NATALYA VDOVINA


Director:

ANDREI ZVYAGINTSEV


Awards:

Venice Film Festival 2003

(Golden Lion)ANDREI ZVYAGINTSEV

(Luigi De Laurentiis Award)ANDREI ZVYAGINTSEV



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